落下の王国 - 町田敦夫

◆“映像の魔術師”が見せる希望と救済の童話(70点)

 ミュージックビデオやCMの撮影で名高いターセムが手がけた長編映画第2作。前作の『ザ・セル』(00)は超とんがったビジュアルにストーリーテリングの技が追いついていない印象だったが、自ら脚本にも参加した本作では、その差がかなり縮まった。

 スタントマンのロイは撮影中に大ケガを負い、恋人にもフラれて入院中。ベッドを離れることのできない彼は、たまたま病室に迷いこんできた5歳の少女アレクサンドリアに即興の冒険物語を語り出す。「6人の勇者が非道な総督を倒すために旅立った」と。少女の歓心を買ったロイは、薬品庫からモルヒネを持ち出してくるよう言葉巧みに仕向け……。

 無国籍感と非現実感あふれる劇中劇の映像は、“魔術師”ターセムの真骨頂。美しくも荒涼たる砂漠に、絶海の環礁で泳ぐゾウ。湖に浮かぶ宮殿から、数々の世界遺産まで、ロケ地は24か国以上に及ぶ。石岡瑛子の手になる衣装も『ザ・セル』の時と同様に奇抜だが、本作ではそうしたインパクトのある背景や衣装が、荒削りだが力強いストーリーの中で消化され、そこだけ目立つことにはなっていない。

 ロイの語る物語は、少女の無邪気な質問や、同室の入院患者の横やりでしばしば中断されることになる。その虚実の境目の破られる瞬間が、なんともユーモラスで微笑ましい。ロイを演じるリー・ペイスのしっとりとした深みのある声も本作の大きな魅力の1つ。たとえば『ジャンパー』のヘイデン・クリステンセンが味も素っ気もないモノローグを聞かせていたのとは雲泥の差だ(こんなところで引き合いに出して悪いけど)。

 自殺願望を持つロイが周囲の現実を映しながら織り上げていく物語は、不可避的に悲劇へと向かう。しかしアレクサンドリアが介入することで物語の帰趨が変わり、それが現実のロイの心情にもポジティブな変化を及ぼしていく。これは希望と救済の童話。細部の設定は多少浅いが、その点はたいしたキズではない。童話で大切なのは、深く掘り下げることではなく、読む者に明日へと向かう勇気を与えることなのだから。

町田敦夫

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