アクションやサスペンスだけでなく、家族を絡ませ、政治闘争を描いてという具合に壮絶な人間ドラマとして描いている。(点数 80点)
(C)Coriolanus Films Limited 2010
名優レイフ・ファイアンズの記念すべき監督デビュー作は、ウィリアム・シェイクスピアの最後の悲劇「コリオレイナス」の映像化…と言っても、舞台を現代に置き換えて大胆に翻案したサスペンス・アクション。
ローマ侵略を狙うある国のリーダー、オーフィディアス(ジェラルド・バトラー)は、ローマの英雄で独裁者のコリオレイナス(レイフ・ファイアンズ)に幾度も闘いを挑んだものの未だ打ち勝ったことはない。数々の武勲によってその存在が高まったコリオレイナスの独裁性に危機感を抱いた政治家たちの策略によって暴徒化した国民に飲み込まれ、ついに祖国から追放されてしまう。復讐を秘めたコリオレイナスは、オーフィディアスのもとを訪ね、彼らの軍を率いてローマを攻撃しようとするのであった…。
舞台を現代に置き換えたことによって、劇中で繰り広げられるアクションシーンは見応えバツグンの迫力が味わえる。マシンガン炸裂に大爆破が観られる市街戦は、本作がアクション映画でもあるために用意された見せ場である。
続いて、暴徒化した民衆の前に怒り大爆発のコリオレイナンスもインパクトが大きいし、後半で観られるコリオレイナンスの母ヴォルムニア(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)が家族を引き連れて復讐鬼と化した息子の前に跪いて懸命に説得する名シーンも忘れ難い。
コリオレイナンスという男が辿る悲劇の運命をアクションやサスペンスだけでなく、家族を絡ませ、政治闘争を描いてという具合に壮絶な人間ドラマとして描いているのだ。
スキンヘッドのレイフ・ファイアンズと男臭いジェラルド・バトラーの直接対決をじっくりと描くと男同士の壮絶なバトルが存分に楽しめたことだろう。それにしても、二人とも過去に「コリオレイナンス」の舞台劇に出演していたというのもチョイ驚きだ…。
(佐々木貴之)