老人と海 ディレクターズ・カット版 - 福本次郎

◆沖縄のさらに南方、日本最西端の島で、漁業で生計を立てる老人の姿を追い、カジキマグロに対する執念を描く。ヤマ場の乏しい退屈な展開は都会から遠く離れた島で暮らす人々の、のんびりとした生き方を反映させているようだ。(40点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 サバニと呼ばれる小さなボートで沖に出る年老いた漁師。自分で研いだ釣針と銛を積み込んで、早朝から夕方まで魚がかかるのを待つ。狙っているのは長く鋭い吻を持つカジキマグロ、だが40~50センチの小物しか獲れない。カメラは沖縄のさらに南方、日本の最西端に位置する島で、漁業で生計を立てる老人の姿を追い、彼のカジキマグロに対する執念を描く。静かな島の生活、若者が少ない活気のない漁港、ヤマ場の乏しい退屈な展開、それらはすべて都会から遠く離れた島で暮らす人々の、のんびりとした生き方を反映させているようだ。

 与那国島の久部良漁港に住む老人は1人乗りのサバニで漁に出るが、漁獲がゼロの日もある。一方で中型漁船を操る中年の漁師はは大物のカジキマグロを仕留め、漁港で解体する。

 釣り針に掛ったカジキマグロは強い力で船を引っ張る。漁師が3人がかりでワイヤーを引っ張り、船に引き寄せ、何度も銛を打つ。その間もカジキマグロは空中に跳ね身をよじりなんとか逃れようと大暴れする。まさに魚と人間の命がけの格闘だ。しかし、そんな劇的な場面が何度もタイミング良くカメラの前に現れるはずもなく、映画はセリの様子や伝統の村祭りなどで興味をつないでいく。島の風習は、日本の領土でありながら沖縄本島とも遠く離れ、台湾が視認できるほど近いという地理的条件から中国の香りが強く漂っている。ただ、それらの映像からは主張がぼやけていて、何が言いたいのか分からない。もっとプロットに沿った編集をしたりナレーションで解説するなり、何らかの問題提起をすべきだろう。余情的な音楽をかぶせるだけでは環境ビデオを変わらないではないか。

 やがて老人の釣り糸にやっとカジキマグロが食いつく。全力でワイヤーを引き寄せると最後の力を振り絞って暴れるカジキマグロに何度も銛を突き立てて止めを刺す。その作業を単独でやり遂げるのがこの老人のプライド。カメラマンはサバニに同乗してその一部始終をフィルムに収めることで、この老人の人生までも切り取ろうとする。その試みは一応成功しているが、もう少し彼に自分自身を語らせていれば魅力あるドキュメンタリーになっていたはずだ。

福本次郎

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