空気人形 - スタッフ古庄

◆人は誰かに必要とされてはじめて意味が!?(85点)

 今週、見たのは「空気人形」。

 タイトルからしてふんわり 可愛らしい感じ♪

 キャッチフレーズ(?)も「空っぽな人形が"心"を持ってしまった――。嬉しくて切ない愛の物語」というものなので、乙女チックな内容かと思いきや・・・

 うわっ!!!

 見始めると、びっくり!!

 現実社会の心の闇をつく、凄く生々しい内容。。

 前ふりとのギャップに不意打ちの衝撃を受け、しばし、この映画の意味が理解できないほど。

 まず、あらすじは・・・

 古びたアパートに男(秀雄)と暮らす空気人形(ここがディープな設定)が、ある日"心"を持ってしまう。

 秀雄(主人公)が仕事にでかけると空気人形は、街へ出かけた(人形なのに)。

 初めて見る外の世界で、いろいろな人とすれ違いながら言葉を覚え、動作を覚え、そんなある日・・・

 ほえ? レンタルビデオ店で働く、純一に想いを寄せ始める――。

 そんな展開。

 人形が心を持ち人間に恋をする、というところは、間違いなくラブファンタジーなのですが、冒頭から、そんなメルヘンな雰囲気は吹っ飛びます。

 もともと、"空気人形"とは、誰かの『代替品』。秀雄が仕事の愚痴をこぼし、彼女の代わりとして性欲処理に使う空気で膨らます人形のことなのです(予想してませんでした。。)。

 秀雄は、この空気人形を本物の彼女(人間)のように愛し、世話をするのですが・・・

 ひとしきり愛した後、その後処理をするのも自分。愛した分愛されることもない。。その寂しさや虚しさをのっけからかなり現実的な映像によって感じさせられます・・・。

 しかし、この秀雄が持つ誰にも言えない陰の部分には、単に人間の持つ、寂しさ故に『誰かと関わっていたい』という欲求を満たすためだけのものではなく・・・

 『人間同士で関わることへの面倒くささ』故に孤独を愛する複雑な心理も含まれていたのです。

 うーん、わかるような気がします。

 そして・・・『自分は誰からも必要とされていないのではないか・・・』『自分の代わりはたくさんいる・・・』

 こんな事も考えさせられるようで・・・

 「人間と人形」「空気と空虚」「生と性」、全てが対比で描かれているのですが、『誰かの代替品』というところでは今の社会、人形も人間も実はどちらも変わらないのではないか。違うのだとしたら一体・・・

 人間であることの意味とは?

 生きることの意味とは?

 そして心の"からっぽ"を埋める方法とは・・・

 そんなことを遠まわしにふんわりと問いかけてくるような、そんな映画です。

 とにかく、頭で考えるのではなく、感じる意味が非常にある映画です。

 かなり不思議な余韻に包まれる、すごく変わった作品でもありますが、かなりの良作だと思います。

 さらにポイント!!

 空気を入れて膨らませるビニール製の人形という難しい役を演じきったぺ・ドルナ。

 彼女の演技を見るだけでもこの映画、十分な価値があると思います。

 こちらもありきたりな表現で申し訳ないですが、「本当にこの人、ビニールでできているんじゃないか」と思えるほどの演技です!

 メイド服を着て動く姿は、等身大のフィギュアが動いているようですし、"心"を持って恋をして、嘘をついたりもするけれど・・・

 それでもまだ、人間の複雑な心までは理解できていないような微妙な雰囲気がまた見事だったと思います。

 ラストも想定外に衝撃的で、決して明るい話ではないのですが・・・

 不思議と暗さを感じさせないのは、"完全な人間の心"を手に入れたわけではなく、あくまでも"空気人形"という絶妙なニュアンスが漂っていたからかもしれません。。。

 ちょっと突っ込みたくなるようなところも正直ありましたが、そんなところも容易に許せてしまうほど、(何度も言ってしまいますが、、)不思議な作品でした。

 「誰も知らない」「歩いても歩いても」などオリジナルストーリーにこだわってきた是枝監督ですが、今作だけは9年もの間大切に温めてきた作品ということで、この点も納得の高品質作品です。

 原作の『ゴーダ哲学堂 空気人形』もすごく気になるところです。

 映画ももう一度観たいですが、原作も読んでみたい!!そう思いました。

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