私は貝になりたい - スタッフ古庄

◆こんなにも理不尽なことがおこっていたなんて(70点)

 前作の『私は貝になりたい』を観たこともなく、もちろん、戦争・戦後を体験した訳でもない私には、今作は衝撃的でした。

 戦争については学校で多少のことを聞き知ってはいますが、毎年耳にすることはほぼ同じ内容、放映されるアニメーション・映像もほぼ同じ。。

 確かに、年に一度、“戦争について考える日”があることで、戦争を知らない私たち世代でも戦争ほど悲惨なことはない!起こしてはならない!ということを感じ、また真摯に、受け止めています。

 が、学校で教えてもらったことは、そのほとんどが戦争“中”のお話。

 戦後も家族から引き離され、理不尽な理由によって、精心的苦痛を強いられてきた人たちがいたことを、私は今回、この作品で恥ずかしながら、初めて知りました。

 この作品では、戦後も苦痛に耐え続けた当時の極々普通の人々の状況を理髪店を営む店主、豊松(中居正広)とその家族(嫁:仲間由紀恵)をとおして見ていきます。

 豊松は貧しく片足が不自由ながらも、妻:房江とともに懸命に働き、かわいい息子にも恵まれ、店もようやく軌道にのり・・人生これから!という矢先・・“赤紙召集”(徴兵命令)が届き、出兵しなければいけなくなるのでした。。

 戦争に行けば命はないかもしれないという不安、悲しみ、泣き叫びたくなるような状況なのにわざと明るく振舞う豊松。気丈に振舞おうとする房江。

 出兵の準備に豊松の頭を刈る房江、房江に頭を刈られる豊松、それぞれの思い出を思い返しながらの散髪シーンは二人の無言の表情に胸いっぱいで涙が浮かびます。。

 そして・・・出兵先では今後の豊松の運命を大きく狂わすできごとが待ち受けているのでした。

 「上官の命令は天皇の命令!」「格下のものは牛・馬と同じ!命令に従うほかはない!」っと現代社会では考えられない当時の日本の組織論理(風習?)で、ある日、捕虜のアメリカ兵の処分を上官より命ぜられた豊松。

 到底、極々普通の一般人には木に縛り付けられた人(捕虜)を刺し殺すなんてできるわけもないのですが・・銃で脅され、仕方なく、意を決し、刺したその先は・・米兵の腕をかすめただけだった・・・

 しかし・・このことが豊松に戦後、更なる過酷な人生を歩ませることとなったのです。

 豊松は終戦を迎え、家族の元へ帰り幸せな生活を送り始めていたころ・・米兵を乗せた一台のジープが・・「清水豊松!米兵殺害で逮捕する!」と豊松は家族から引き離され、囚人の身となってしまうのでした。。

 「どうして俺が!」「なんで!俺が!」「俺は罰せられることなどしていない!」っと必死の叫びも訴えも、言葉がうまく通じない米兵の裁判では、不利に・・

 また、言葉以上に、「上官の命令は絶対!それに従っただけ!個人の意思などない!」とする日本(豊松)に対し、アメリカ側は「命令はされたのだとしても捕虜を殺したいとあなたが思ったから殺した(命令に従った)のでしょう!?命令を断らなかった!」と当時の日本人の組織体質を理解しない(できない)アメリカ。

 さらには、命令をした、していない!などの上官たちの部下への責任の押し付けも加わり・・

 第一審で豊松に有罪判決を下してしまうのでした。。

 こうして、戦争によって二度も引き裂かれてしまった豊松と家族。

 それでも諦めず、豊松は減刑の嘆願書を、房江は豊松の減刑を願う署名を集める、など、終戦を迎えてもなお、二人の戦いは終わらなかった。。

 豊松の思い、房江の思い、また同じく理不尽な理由で拘留された同じ監獄の囚人達の思い・・重罰である絞首刑を待つ者のそれはもう狂いそうな心境・・

 刑に対するいろんな情報が飛び交う中、自分は助かるんじゃないか?いや、やっぱりだめなんじゃないか・・・希望と絶望が上下する極限の心理状態。

 最高潮にまで高まった喜びと興奮から一気に奈落のそこへ叩きつけられる・・そんな状態。

 あなたならどうでしょう?むしろどうなると思いますか・・。平常心なんて保っていられるかどうか・・私なら?・・・どうにも想像もつきません。。。

 そんなことをも考えてしまいました。

 そして、映画終盤に、豊松が房江に宛てた手紙の朗読があるのですが、、それはもう・・様々な思いが巡り、涙、涙、涙。です。

 その手紙の中には題でもある『私は貝になりたい』という豊松の気持ちがつづられているのですが・・他の人物になりたい、や鳥や犬などの動物になりたい、というわけではなく、どうしてなりたいものが貝だったのかという理由が、豊松がいかに人に対して絶望し、追い詰められた状態だったのかを物語っていたのだろうなと思います。

 そんな戦後もこの上なく悲しいことが続き、町も体も、なによりすべての人の心に大きな傷を残す。その傷以外、なにも残らない・・戦争・・なんなんだ?戦争って・・・

 うまく表現できず、おざなりな言葉でしかお伝えできないことが、非常にもどかしいですが、戦争は悲しみしか生まない・・なんと無意味なことなんだと改めて深く思いました。

 この作品は何より悲しく、切なく、そしてむなしい、やり場のない怒りさえこみ上げてくるもので、様々な感情とともにいろいろと考えさせられました。

 戦争を知らない世代へ語り継がれるべき作品であり、なんとも深い・厚みのある映画だったと思います。

 最後に・・

 終盤の中居さんの演技はすごかったです。完全に人相が変わっています。

 日ごろの中居さんのあのキラキラくるくると大きな目が、このときばかりは坊主頭であったことも重なってか、ぞっとするほどの形相に。すさまじい気迫です。

 狙っていたのかはわかりませんが、若い世代でもとっつきやすい中居くんを豊松に、仲間由紀恵さんをパートナーに置くことで、内容が内容の本作でも世代を問わずとっつきやすく観てみようかな・・という気になれるのではないでしょうか。そういう意味でも私は配役は正解だったように思います♪前作のイメージがない分、私個人が受け入れやすかったというだけのことも考えられますが(笑)

スタッフ古庄

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