私の中のあなた - 佐々木貴之

◆観る者に温かさと優しさを提供し安らかな気持ちにさせる(85点)

 アメリカの人気作家ジョディ・ピコーの大ベストセラー小説「わたしのなかのあなた」をニック・カサヴェテス監督が映画化。

 11歳の少女アナ(アビゲイル・ブレスリン)は、2歳の頃に発症した白血病と闘っている姉ケイト(ソフィア・ヴァジリーヴァ)を救うためのドナーとして遺伝子操作によって創出された。ある日、アナはケイトへの腎臓提供を拒否し、ケイトの看病に全身全霊を注ぐ母サラ(キャメロン・ディアス)と父ブライアン(ジェイソン・パトリック)を訴えるべくTVCMでお馴染みの敏腕弁護士キャンベル(アレック・ボールドウィン)を訪ねる。

 死と隣り合わせの病気をネタにして観る者を悲しませたり、逆に感動させたりする作品は多々存在するが、本作は従来のこの手の作品の上を行った。

 劇中で描かれていることは悲劇であることに間違いはないが、単なる悲劇やお涙頂戴モノにならないように工夫されているのである。

 ケイトとアナの仲良しぶりや笑顔いっぱいの家族といったプラスイメージが取り入れられている点が秀逸であり、これが劇中の“悲”のイメージやケイトの白血病による苦しさを和らげ、観る者に温かさと優しさを提供し、安らかな気持ちにさせる。

 また、ケイトのボーイフレンドである同じ病気の男児テイラーとの交際、家族との三分間写真撮影のシーンをコミカルなタッチで描いている。これによって作品そのものが明るい雰囲気を醸し出し、観る者を笑顔にさせる。

 家族や生死の在り方、医療問題といった観る者に考えさせる要素も取り入れられており、これが小難しさを感じさせるような描き方ではないのが良い。

 本作で一番気になる点といえば、やはり“なぜアナが両親を訴えるのか?”ということだろう。自身の身体は自分で守りたいが、そうすれば大好きな姉ケイトは病死してしまう。アナのこの行動の裏に何が隠されているのか? 終盤でこの真実が描かれるが、姉妹の仲の良さと絆が観る者に強く伝わり、心を打たされ、感動させられる。

 キャメロン・ディアスの母親役初挑戦も注目度大だ。ケイトの延命治療に専念するべく弁護士の職務をはじめとする人生の全てを犠牲にし、頭がいっぱいで周りが見えなくなっている状態を好演している。キャメロンは、ケイトの看病に全力投球する母サラをリアルに演じるために全編ノーメイクで挑んでおり、劇中ではスキンヘッドになったケイトが「この格好で外出したくはない!!」と言えば自身もバリカンで髪を剃り落としてスキンヘッドになってしまう。とにかくキャメロンの演技力の高さと役者魂は最高に素晴らしい。

佐々木貴之

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