◆どんな悪ノリが見られるかと思ったら、ビジュアルはさておき、ストーリーは思ったよりまっとうだった(50点)
バラエティー番組から生まれた人気女性(?)ユニット「矢島美容室」がまさかの映画化。どんな悪ノリが見られるかと思ったら、ビジュアルはさておき、ストーリーは思ったよりまっとうだった。アメリカのネバダ州で、父親・徳次郎が営む矢島美容室。母マーガレット、おしゃれに夢中でオスカー女優を目指す長女ナオミ、ソフトボールチームのエースの次女ストロベリーは、幸せに暮らしている。だが徳次郎の突然の家出で事態は急変。父を探す足がかりとしてミス・ネバダコンテストの優勝を目指すナオミ。そして宿敵ラズベリーとのソフトボールの試合に臨むことになるストロベリーは、友情と愛の板挟みに。矢島家はいったいどうなってしまうのか…?
家族の絆、友情、恋。ニッポン人よりニッポン人らしい矢島美容室の3人が、なぜジャパンの東京でデビューするに至ったのかという秘密を解き明かすこの物語は、いわばエピソード・ゼロだ。矢島美容室はモータウンサウンドを思わせる女性3人によるユニットだが、デビューはてっきりなりゆきだと思っていたら、父を探すためという泣かせる理由が。しかもその父親とは…、いやいや、これは見てのお楽しみだ。ヒットチャートを賑わせた彼女たちの音楽も、超絶的な振り付けと共に映画用にアレンジした華麗なバージョンで披露される。TV局主導の映画ばかりと常日頃ボヤいてばかりだが、この映画はそれすら逆手にとった商魂たくましい作品で、バラエティー番組という出自をマックスに利用して悪ふざけを正当化。その極みともいえる演出が最後の最後に仕込まれている。ラズベリー役の黒木メイサいわく「この借りは続編で返すわ!」。あるのか、続編?! 個人的には、もっと歌と踊りをふんだんに盛り込んでミュージカル度数を上げてほしかった気も。劇場の大スクリーンでこれを見る価値があるかどうかはこの際別問題として、無駄に豪華なゲスト出演と確信犯的にユルい物語を味わってほしい。
(渡まち子)