◆アウトローたちによるアウトロー映画(75点)
アメリカの人気プロレス団体WWEの製作第三弾作品で、スコット・ワイパー監督がメガホンを取ったB級娯楽アクション。
コンラッド(“ストーン・コールド”スティーヴ・オースティン)ら十名の死刑囚が、絶海の孤島に集められることとなった。それは、この島で制限時間30時間以内に九名を殺害して生き残った一名が自由の身になるという殺人ゲームを行うためであった。また、その模様はインターネット番組で生中継される。十名は30時間後に爆破する時限爆弾を足首にセットされ、ヘリに乗せられて孤島付近の海に突き落とされる。だが、その内の一名は誤って陸地に突き落とされてしまい、即死亡する。九名のアウトローたちによるデス・バトルの火蓋が切って落とされる。
“ストーン・コールド”スティーヴ・オースティンと言えば、プロレスラーとしては日本でも人気が高く、現在は事実上引退しているが、WWE時代は現在は映画スターとして大活躍中のザ・ロック=ドウェイン・ジョンソンと並ぶ看板レスラーとして、リング上で缶ビールを一気飲みする姿等が印象的だった。また、若手時代は日本にも来日し、武藤敬司(彼にも『光る女』という相米慎二監督作品で映画主演の経験あり)とも一戦を交えた。役者としては、TVドラマ『刑事ナッシュ・ブリッジス』の刑事役でデビューを果たした(ちなみに日本でレスラーがTV刑事ドラマの刑事役でレギュラー出演と言えば、菅原文太主演『警視庁殺人課』の剛竜馬)。その後、WWEのドキュメンタリー映画『ビヨンド・ザ・マット』に顔を出し、レスラーが大挙出演するリメイク版『ロンゲスト・ヤード』に出演した経験があるが、主演は本作が初なのである。
内容は単純明快な筋書きであり、設定は『バトル・ロワイアル』+『デス・レース』という感じ。見せ場は当然の如く肉弾戦だ。オースティンらガタイのゴツい男が一対一でぶつかり合う模様をキャメラはアップで捉える。これが迫力を感じさせると同時にやたらと揺れ動くため、闘いの情熱すら感じられる。オースティンのプロレス技を少しだけ活かせた格闘アクションは、レスラーとしてのオースティンのキャラを反映させているため、ファンにとっては嬉しく思えるはずだ。また、ド派手な爆破シーンもいくつか用意されているため、見応えのあるアクション作品として仕上がっている。他にも黒人女が男のタマを蹴り上げるという痛々しいバイオレンスや極悪非道な残虐さも味わえる。これぞアウトローたちによるアウトロー映画だと言っても良いだろう。オースティン以外のキャラも注目度が高い。ヴィニー・ジョーンズ扮する英国精鋭部隊出身のマクスターリーが悪役らしさを発揮し、日本人役者マサ・ヤマグチ扮するサイガが得意とする格闘技を披露したりと好印象だ。
肉弾戦を描く一方で番組製作スタッフたちの苦悩や葛藤等の描写やちょっとした社会派テイストも取り入れられているため、これらのシーンも要注目だ。メディア社会の悪の部分を浮き彫りにして観る者に考えさせるというシリアス要素を取り入れたことは、ポイントが高く、単純なアクションに仕上げても良い所をあえて内容のある作品に仕上げていることがわかる。
本作は孤島をリング代わりにした九名参加バトルロイヤル戦だ。しかも、ノールールの殺し合いというハードコア・デスマッチの要素を超越させてだ。とにかくB級アクション好きはもちろん、プロレス格闘技ファンも必見の一作だ。
(佐々木貴之)