白日夢 - 小梶勝男

◆ポルノでも文芸映画でもなく、怪談映画。この「白日夢」は100パーセントの「悪夢」だ(68点)

 「白日夢」といえば、1981年に武智鉄二が監督し、愛染恭子が出演した「本番映画」が有名だが、今やアダルトビデオ(といってもすでにビデオを見ている人は少なく、DVDや動画ファイルだろう)でいくらでも本番行為が見られるようになった。本番が売りにはならない時代になってしまった。

 今回は、「たまもの」のいまおかしんじと愛染恭子の共同監督で、ドラマの部分をいまおかが、濡れ場の部分を愛染が演出しているが、濃厚なエロチシズムを期待すると肩透かしをくらう。ポルノとしては中途半端な印象だ。谷崎潤一郎原作だが、文芸映画の雰囲気もない。

 だが、ホラー、怪談映画として見たとき、本作は妖しい輝きを放ち出す。これは、女の妄念にとりつかれ、メビウスの環のように奇妙に歪んだ時間軸に投げ込まれた男の、恐怖の物語だ。

 派出所勤めの警官・倉橋は、空き巣被害に遭った女性・千枝子と知り合ううち、奇妙な幻覚を見るようになる。千枝子は歯科医院の助手で、歯科医と不倫関係にあった。千枝子を愛するようになった倉橋は、千枝子に歯科医の妻を一緒に殺して欲しいと頼まれる。

 幻覚か現実か曖昧なまま、少しずつズレながら循環する時間。よみがえる死体、自殺。ゴソゴソと動く死体の入ったゴミ袋。そして、白昼の狂気の殺人。内容は怪談そのものと言っていい。だが、怪談的なおどろおどろしい演出はなく、あくまで怪異は「幻覚」すなわち「白日夢」として描かれている。それがかえって怖い。日常に怪異がふっと入り込んでいくような感覚が表現されている。この「白日夢」は100パーセントの「悪夢」。ラスト近くなど、ほとんど現代版「四谷怪談」か「累ヶ淵」のように思えた。

 主演の西条美咲にはもっと強烈な存在感が欲しかった。エロチシズムももっと濃厚に描けたと思う。歯科医の妻を殺す場面が首を絞めているように見えないなど、演出上の細かい瑕疵もある。だが、怪談映画としてはなかなかよく出来ている。ポルノや文芸映画だと思って素通りせず、怪談ファンには是非、見てもらいたい。

小梶勝男

【おすすめサイト】