◆結末に至るまでの"中身"が爆発的におもしろい(70点)
美人テレビプロデューサーのアビー(キャサリン・ハイグル)は、完璧な男を求めるあまり、男運に見放されていた。ある日アビーは、隣りに越してきた医師コリン(エリック・ウィンター)に恋をする。彼はアビーのお眼鏡どおりの男だったが、どう関係を進展させたらいいか悩んでいた。そんな折、彼女の前に"男の本音トーク"で視聴率を稼ぐ異色パーソナリティのマイク(ジェラルド・バトラー)が現れた。アビーはマイクから、男をモノにするための駆け引きを学ぶことになるが……。
ちょっぴりお高い完璧主義者の女アビーと、下品な言葉ばかりを口にするがさつな男マイク。お互いに恋愛対象から外れており、口ゲンカばかりしているが、アビーの恋の相談にマイクが乗っているうちにいつしか……という筋は、おおむね観客の想像のつくところ。予想できる恋愛ドラマなど見ていておもしろくない、と思う人もいるかもしれないが、本作「男と女の不都合な真実」は、展開や結末よりも、結末に至るまでの"中身"が爆発的におもしろいのだ。
特筆すべきは、マイクのキャラクターだ。自身のテレビ番組中に、歯に衣着せぬ物言いで、ズバズバと男の本音をぶつけていく。放送禁止用語連発で持論を展開するマイクの番組が高視聴率を稼ぐサマが痛快だ。タブーを破るというのは、それ自体が興味の対象になりうる、ということなのだろう。もっとも、ストレートに男と女の本音の核心をつくマイクの恋愛哲学に「ふむふむ」あるいは「そうそう!」と相づちを打つ紳士淑女も少なくないだろうが。
この映画の白眉は、スリルと皮肉とユーモアを満載した会話劇だ。主人公ふたりの掛け合い(言い合い?)は、膨大なセリフ量にもかかわらず、とにかくテンポと歯切れがいい。ムダを省いて95分というコンパクトな尺にまとめた編集もお見事だ。この手の野蛮男を演じさせたらピカイチのジェラルド・バドラーと、優雅な気品と茶目っ気のあるコメディセンスを兼ね備えたキャサリン・ハイグル。主演ふたりの頑張りにも拍手だ。
おもいきり下品な内容にもかかわらず、映画として品を落としていないのは、妙に説得力のあるマイクの恋愛理論の賜物だろう。たしかに、ベストセラー「話を聞かない男、地図が読めない女」以降、世界的に"男と女の思考や感覚の違い"を解説した本が多数出版されている時代背景に鑑みれば、マイクが展開する持論はタイムリーでもあり、内容的にも、咀嚼して味わうにふさわしいものだといえる。
少々乱暴で、だいぶエッチで、かなり赤裸々な会話の数々が、観客から大爆笑を引き出す。私も、アビーの食事中のバイブ・パンティ事件や、番組内における教祖然としたマイクの大演説には、大笑いさせてもらった。下ネタ満載につき、下品な会話に免疫のない方にはオススメできない。付き合い始めたばかりのうぶなカップルにも、少し刺激が強いかもしれない。
(山口拓朗)