生き残るための3つの取引 - 中野 豊

韓国の「弱肉強食・競争社会」を背景に、殺人犯捏造という警察のカムフラージュにおののく社会派サスペンス。(点数 55点)


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本作は、水谷豊主演の刑事ドラマ『相棒』に似た高揚感を感じさせます。真実を権力側の都合のいいフィクションにすりかえるというテーマは、普遍的であると同時に「今の時代」を映し出します。

惜しい(点数が低目)のは、主演のファン・ジョンミンを除く役者陣のオーバーアクトと、物語の前半を焦らずにみせて欲しかった。
登場人物の相関関係をスマートに描ききれていません。

・ストーリー

女児連続殺人事件を追う警察庁は容疑者を追い詰めながら射殺。
警察上層部はその誤殺を隠蔽するために、優秀でありながら警察大学卒で無いために出世街道から外されているチョルギ刑事(ファン・ジョンミン)に昇進を餌に、犯人のでっち上げを命じるのです。

命を受けるチョルギ刑事は、捜査対象であった裏組織の建築会社社長ソック(ユ・ヘジン)に「犯人捏造」を促します。

※以下、物語の核心に触れるため、鑑賞後にお読みくださいませ。

犯人にでっち上げられたのは、前科者の中から強盗や性犯罪の前歴があり、知的障害の妻を持つイ・ドンソクで、滅茶苦茶な理由で逮捕。マスコミは警察の大金星として大々的に報道します。

一方、検察庁で順調なキャリアを積むヤン検事は、裏金提供を受ける不動産業界のキム会長が不正入札(ソック社長も入札に加わっている)の件でチョルギ刑事にマークされていることを知るのです。

ある日、ヤン検事がキム会長の接待ゴルフでグリーンをまわっている最中に、ソック社長の手下によりキム会長が刺殺されます。
ヤン検事とキム会長の癒着の証拠写真の出自から、物語はチョルギ刑事とヤン検事の脅し合戦の様相を呈していきます。

結局、チョルギ刑事は捏造を依頼したソック社長を工事現場の事故死にみせかけて殺害するも、それを阻止しようとした腹心の部下テホを死なせてしまいます。
ここでチョルギは、またしても偽装工作を謀ります。ソックとテホが刺し違えしたように細工し、自らの痕跡を消しその場から去るのです。

すべてが解決したようにみえた時、警察庁の進級任命式に出席しているその日、奇しくも部下デホの葬儀が行われていました。
葬儀に参列していた同僚刑事たちはチョルギ刑事が葬儀より昇進式典参加を優先したことに不信感を隠せません。

【超ネタバレ注意】

そんな時、同僚刑事たちはチョルギ刑事のデホ殺害偽装映像(ソック社長の運転手の携帯電話から)を発見します。
猛烈に激怒する同僚たちは、チョルギ刑事殺害を実行することになるのです。

・・・事件の発端となった、偽装犯人=イ・ドンソクのDNA鑑定の結果、彼こそが「真犯人」であったという驚きの真相。

韓国社会と組織の裏側と矛盾。歯車と化した一介の刑事が権力という圧力により身動きの取れなくなる状況を描きだします。
トゥルーストーリーを「腕力」でねじ曲げてしまうというテーマが今 問われます。私たちが見ている日々のニュースも、リテラシー・咀嚼が肝心・・・なのでしょう。

■2010年 韓国映画/上映時間:119分/監督:リュ・スンワン/出演:ファン・ジョンミン、リュ・スンボム、ユ・ヘジン、チョン・ホジン、マ・ドンソク ほか/オフィシャルサイト: http://www.3torihiki.com/

中野 豊

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