獄(ひとや)に咲く花 - 渡まち子

獄(ひとや)に咲く花

© 2010『獄に咲く花』製作委員会

◆幕府の目を盗んで密航しようとしたほどの松陰にならって、もう少し映画にも冒険心がほしかった(50点)

 吉田松陰の生誕180年を記念して作られた歴史ドラマ。1854年、幕末期。寅次郎(松陰)は海外密航に失敗し、長州・萩の武家専用牢屋敷の野山獄に投獄される。その獄は、一度入れられたら二度と生きては外には出られない絶望的な場所だった。そんな場所にも係わらず、他の囚人たちに気さくに声をかけ希望を持つように説き、短歌の会などを主催する寅次郎。獄のただ一人の女囚の高須久は、そんな寅次郎に惹かれていくが、安政の大獄と呼ばれる粛清の時代が迫っていた…。

 原作は古川薫の「野山獄相聞抄」。吉田松陰は、明治維新の基礎となる思想を伝えた教育者・思想家だ。映画では、享年30歳という短い生涯の中、獄中で出会った囚人の女性との生涯ただ一度の淡い純愛を軸に、どんなときでも希望を失わない松陰の人となりを描いていく。その監獄は二度と生きては出られない悪名高い場所なのだが、獄の中での生活は意外にもユルい。個別の牢には鍵もなく、ある程度の自由は与えられている。しかも“男女混獄”なのだ。この優遇された不思議な制度は、そこに入れられている囚人が武士という身分だからなのだが、規則はユルくとも希望のない獄中生活は彼らの誇りを奪い、真綿で首をしめるように精神を追いつめていく。そんな環境でも決してブレることなく、理想を追い求める松陰の姿は、あまりに“偉人”で距離感を覚える。本作はいわゆるご当地映画なのだが、故郷の偉大な思想家に対し、正統派アプローチでまったく遊びがない。やはりその土地で描くとマイナス面や史実を自由に膨らませる描写は難しいのか。幕府の目を盗んで密航しようとしたほどの松陰にならって、もう少し映画にも冒険心がほしかった。それでも、雪の中で傘を差し掛ける構図など歌舞伎の名場面のようで、ハッとする美しい映像があり、映画としては端正な印象だ。

渡まち子

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