猿ロック THE MOVIE - 福本次郎

◆銀行強盗、ヤクザ、警察、そして謎の美女。逃げては追い、信じては裏切られる複雑に入り組んだ人間関係の中でのスリリングな男の冒険は、スピーディで見る者に考える間を与えず、細かい矛盾や疑問点の芽を強引に引き抜いていく。(40点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 銀行強盗、ヤクザ、警察、そして謎の美女。突然主人公に降りかかった非日常が彼の人生を変えていく。逃げては追い、信じては裏切られる複雑に入り組んだ人間関係の中で、男のスリリングかつミステリアスな冒険がスピーディに描かれる。次々に立ちはだかる謎と難題を体当たりで解決して行く過程は、見る者に考える間を与えず、細かい矛盾や疑問点の芽を強引に引き抜いていく。だが、余りにも多くの登場人物に様々な意味を持たせ過ぎたため整理がつかなくなり、ストーリーは全体像が見えにくくなってしまった。

 強盗が立てこもった銀行の裏口を開けるために呼ばれた猿丸は任務を終え、人質は無事救出される。後日、マユミと名乗る女が猿丸を訪ねオフィスの金庫を開けてくれと頼む。中には銀行から持ち出された黒いトランク、2人はそれを持ち出して逃走する。

 トランクの中身は警察の裏金と献金リストで、警察は奪われたことを決して口外できない。犯人の目的は最初から銀行の金ではなくこのトランク。必然的に猿丸とマユミは双方から追い詰められていく。マユミこそ運命の女と思い込んでいる猿丸は、道中さらにマユミに対する忠誠心を育んでいく。そのあたりバカ男の純情が時折はさむ妄想で表現されていて楽しめる。

 しかし、猿丸が鍵師であるという設定がイマイチ生きてこないのが残念。金庫を開けるときに専門家ならではの知識とテクニックをもっと見せてほしかった。その他にも、銀行の裏口の錠がピッキングで開くほどセキュリティが甘いはずはない上に、警察が裏金を銀行に預けるのも不自然だし、そのタイミングを強盗が知っているのも説得力に欠ける。また、ヤクザの手下が常用している覚醒剤のようなピルも伏線として生きていないし、トランクの入れ替えや中身はいつ用意したのかも不明。物語が進むにつれ粗が目立つ展開は、もう少し要素を絞り込み緻密な構成を心掛けるべきだった。

福本次郎

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