飼育係とシーザーを対比させることで“人間性”とはいったい何かを問うていく。(点数 70点)
(C)2011 TWENTIETH CENTURY FOX
テーブルから天井灯に飛び移り手すりを伝って屋根裏部屋に上がる。
太い幹を駆け上り枝から枝を渡って大木を登る。それらのシーンは流
れるようなワンカットに収められ、めくるめく高揚感と重力から解放
された自由を味あわせてくれる。映画は人間並みの知能を与えられた
チンパンジーが自我に目覚め、人間への不信が敵意にかわる過程を描
く。知性のほかに他者を思いやる心を持った類人猿が、尊厳を守るた
めに立ち上がる、その文字通り二本足で背筋を伸ばした立ち姿は、運
命を自覚した者だけが備える鋼鉄の意思を体現していた。
【ネタバレ注意】
研究者のウィルはアルツハイマー新薬の臨床試験に使ったチンパンジ
ーの赤ちゃんを引き取る。シーザーと呼ばれたその子は驚異的な学習
成果を見せるが、隣人に暴力をふるい霊長類保護施設に収容される。
シーザーはウィルに愛情深く育てられたおかげで、思慮分別や優しさ、
正義感といった理性感情まで身に着けている。だからこそ保護センタ
ーで類人猿を虐待する飼育係に憤り、法に縛られて彼らに対して無力
なウィルにも失望する。やがてシーザーが次第にリーダーとしての頭
角を現していくが、オランウータンやゴリラなど異種のボスを手なづ
けチンパンジーのボスに制裁を加えるなど多数派工作も怠らない。
そして頭の悪そうな飼育係とシーザーを対比させることで“人間性”
とはいったい何かを問うていく。そのあたり、粗野で卑小な飼育係の
存在がシーザーの優位性を印象付けている。
(福本次郎)