◆これぞ真夏の打ち上げ花火ムービーだ(70点)
80年代の人気TVシリーズが、リドリー&トニー・スコット兄弟のプロデュースでスクリーンに復活。無実の罪で追われる身となった4人の米軍レン
ジャーが、脱獄して正義の味方の<Aチーム>を結成するまでを、アクション満載で描き出す。
イラクに赴任中のハンニバル(リーアム・ニーソン)は、部下のフェイス(ブラッドリー・クーパー)、バラカス(クイントン・“ランペイジ”・ジャ
クソン)、マードック(シャルト・コプリー)とともに、盗まれた米ドル紙幣の原版をゲリラ集団から取り戻す。ところが思わぬ罠にかけられて軍刑務所に収
監。4人は濡れ衣を晴らそうと、それぞれ荒唐無稽な方法で脱獄するのだが……。
タイトルが出るのは始まってから20分も後だが、4人の出会いを描いたその「メキシコ編」だけでも、豪快な銃撃戦あり、武装ヘリのドッグファイト
あり、笑えるシーンも数々ありと、下手なアクション映画1本分に相当するほどの中身の濃さだ。もちろん本筋に入ってからもバグダッド、フランクフルト、ロ
サンゼルスと三大陸を股にかけた<Aチーム>の活躍は続く。監督・脚本のジョー・カーナハンは、計画を説明するハンニバルのセリフに、手際よく実行シーン
の映像をかぶせた。頭脳戦とドンパチをバランスよく配した構成もいい。
戦車で空を飛ぶ(!)といった漫画チックな物語を、絵空事になる寸前で踏みとどまらせているのが、個性豊かなキャラクターの魅力だ。知恵者のハン
ニバル、二枚目のフェイス、モヒカン刈りのバラカス、イカレたパイロットのマードックと、設定は各人各様。試写を観る前は「ニーソンのようなインテリのイ
ギリス人にタフな米兵役が務まるのか?」とも案じたが、ひげ面で葉巻をくわえた軍服姿は思ったよりも違和感がない。『第9地区』で“変な人”ぶりを存分に
披露したコプリーは、ハリウッド・デビューとなった本作でも持ち味を遺憾なく発揮した。
CIAと民間軍事会社の傭兵を悪玉にする設定は、現実のステレオタイプそのままで、わかりやすいことこの上ない。それぞれを演じたパトリック・
ウィルソンとブライアン・ブルームは、手強い悪党ぶりを見せつけて、作品をかっちりと引き締めた。フェイスの元恋人役のジェシカ・ビールは、ストーリーに
対する貢献こそほとんどないが、「紅一点」としての役回りは過不足なくこなす。クーパーとビールがスピード写真の狭いボックス内で演じる絡みは、18禁の
要素などなくても相当に扇情的だ。
テレビドラマの焼き直しだけにハリウッドの企画の貧困を嘆く声が上がるのは避けられまいが、一定の水準で作ってあればたいていの批判は跳ね返せる
もの。その点、本作はド派手で陽性、そして健全。サマーシーズンのブロックバスター・ムービーとして、十分に評価<A>を与えられる。
(町田敦夫)