◆これぞグラインドハウス・ムービー。千葉真一がスプラッター空手を披露する。B級映画の面白さがいっぱいに詰まった作品(80点)
千葉真一の「殺人拳」シリーズ第一弾。千葉が演じるキャラクターは悪に近い。志穂美悦子をヤクザに売り飛ばしてしまうし、石油王の娘のボディガードをしながら、その財産も狙う。ただやたらに強くて、残酷。目玉を指で突き刺し、金的を握りつぶして引きちぎり、のどを引きちぎり、頭蓋骨を砕き・・・と、アクションにブルース・リーほどのキレがない分、スプラッター描写が見ものだ。
それと、顔の表情。これが凄い。「顔面空手」とでも言いたくなるくらいだ。体技もいいが、とにかく顔。笑ってしまう。信じられないくらいオーバーな顔演技が凄惨なスプラッター空手を笑いに変える。ハァーッとやたらに大げさな「息吹」も見どころ。刀も手で折ってしまう。
対戦相手も盲目の居合の達人とか、ナイフ投げ男とか、巨人とか、いちいち、ジミー・ウォング映画みたいに奇怪な人物ばかり。B級映画の楽しさがいっぱいに詰まっている。
石井輝男の「地獄拳」シリーズのように、最初からナンセンスな笑いを狙ったのではなく、普通に撮ろうと思ったけれど千葉の顔演技とスプラッター空手があまりに凄いのと、脚本があまりにデタラメなので結果的にヤケクソなお笑いになってしまったのだろう。
それだけに妙な味がある。見慣れた日本人の俳優が平気で「アラブ人」役で出ていて、しかもカタコトの日本語をしゃべるというデタラメさ。何しろ、橋の上から車ごと落とされても「息吹」で耐えてしまうので、「レモ/第一の挑戦」のシナンジュのジイサン並みに強いのだった。
ラストも何にも解決しないまま、パッと終わってしまう。これぞグラインドハウス・ムービーの終わり方ではないだろうか。いやいや、面白かった。志穂美悦子の太股やパンティーが見えるエロ場面もうれしい。
(小梶勝男)