湾岸ミッドナイト THE MOVIE - 福本次郎

深夜の首都高速湾岸線、時速180キロを超す世界でドライバーが体感するものは究極の陶酔と死と隣り合わせのスリル。そんな魔力に憑りつかれた高校生が、伝説のスポーツカーを手に入れて走らせ、生きることの真実に迫っていく。(50点)

湾岸ミッドナイト THE MOVIE

© 楠みちはる/講談社・「湾岸ミッドナイト THE MOVIE」製作委員会

 深夜の首都高速湾岸線、一直線に伸びる3車線の道路は走り屋たちの天国。そこにはスピードに魅入られ、競走相手をぶっちぎることでしか自分の存在意義を見いだせない人間が夜な夜な集まってくる。ポルシェ、フェアレディZ、フェラーリ、スカイラインGTR…。時速180キロを超す世界で彼らが体感するものは究極の陶酔。死と隣り合わせのスリル、そして周囲の羨望と驚きの視線を浴びる快感が麻薬のように病みつきになる。そんな魔力に憑りつかれた高校生が、伝説のスポーツカーを手に入れて走らせ、生きることの真実に迫っていく。

 フェアレディZを駆るアキオは「ブラックバード」と呼ばれるポルシェに抜かれ悔しい思いをする。ある日、廃車になった旧型のフェアレディZを買い取ったアキオはレストアし、「ブラックバード」にチャレンジ。アキオのZは「悪魔のZ」と呼ばれる、ステアリングを握るものを地獄に送ってきたいわくつきの車だった。

 タイヤもなく塗装もはげた「悪魔のZ」を引き取り、部品を集め修理し再びエンジンに火を入れる。アキオはその工程すべてにかかわり、修復後の手入れもほとんど自分でする。一方、「ブラックバード」の持ち主・達也はチューンアップをすべて工房任せ。やはりこういうところでは自らの手を汚すアキオに感情移入する。復活した「悪魔のZ」は見事な出来栄えで、ギアチェンジしてアクセルを踏み込む様に思わず身をのりだしてしまう。

 やがて周囲の反対を押し切ってアキオは再度「ブラックバード」に挑む。その過程で、以前の持ち主の妹や学校の先生、女優やカメラマンなどが絡んできて、「悪魔のZ」の来歴が明らかになる。ここにきてこの物語の主人公は人間ではなく「悪魔のZ」であることに気づく。あくまで乗り手ではなく乗り物がメイン。マシン自体が意思を持ってドライバーを選ぶかのような不気味さを醸し出すとともに、機械に込められた作り手や過去のオーナーの魂の影までちらつくのだ。そのあたりの因縁をもう少し深く語ってほしかった。

福本次郎

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