◆どうしてこうなるの?? との疑問ばかりが沸きあがる(35点)
雑賀俊郎監督による鹿児島3部作の第2弾の青春映画は、ヨットレースに挑戦する少女たちの奮闘を描くが、魅力に乏しい物語だ。前作「チェスト!」は小学生が遠泳にトライする姿を、さわやか、かつコミカルに描いた好編だっただけに、今回の出来栄えは残念である。高校生のミオは小説家の父親が海で行方不明になって以来、港に停泊する父のヨットに引きこもっていた。一方、ヨットの天才少女キヨミは、練習中に親友を失ったつらい過去を持つ。共に海での悲しい出来事を体験した二人の少女が出会い、友情を育んでいくのだが…。
高校生の女の子二人が、海を媒体に、悲しみを乗り越えて再生するというのが大筋。思春期特有の繊細さと大胆さを併せ持つミオとキヨミが、父や親友を亡くした孤独感で共鳴しあうのは納得できる。だが、そこから再生していく展開に説得力がない。ストーリーのディテールは甘く、少女がヨットで一人で暮らすこと、漁師のいやがらせの顛末、素人の寄せ集めのクルーの実力など、どうしてこうなるの?? との疑問ばかりが沸きあがる。イマドキの高校生が携帯やパソコンではなく、文章を暗唱できるほど読書好きということや、文学をいちいちセリフにするという設定も、リアリティがなさすぎる。映画の中心であるべきヨットとレースという肝心の部分が弱いことが最大のマイナスで、ヨットという特殊なスポーツの魅力を、ルールや危険性も含めてもっと深く描くべきだ。勝つことばかりに気持ちがいくキヨミが仲間を信頼することで成長していく姿を描くのなら、ストーリーはもっとシンプルで良かったのでは。若手俳優の素直な演技と、桜島を臨む広々とした海だけが、はればれとした印象だった。
(渡まち子)