キャラクター設定がユニーク(50点)
(C)2010『洋菓子店コアンドル』製作委員会
鈍感だが一生懸命、ドジなのに自信たっぷり、厭味を言われてもへこ
たれず、どんな時にもまっすぐにぶつかっていくヒロインは、つい応
援したくなるほどキュートだ。
彼女が一人前のパティシエとして成長
していく姿と、人生のどん底をさまよう伝説のパティシエが立ち直っ
ていく過程をシンクロさせる構成は、甘さの中にビターを利かせたチ
ョコムースのような絶妙な味わいを見せる。
彼らが作る“食べた人が
幸せになるスィーツ”は、鮮やかな色使いと柔らかな舌触りで再現さ
れ、見る者の心までとろけさせてくれる。
ケーキ職人の娘・なつめは、コアンドルという洋菓子店で住み込みで
働き始める。だが、娘の事故死以来キッチンに立てなくなっている十
村に、なつめが作るケーキはまたも批判される。
先輩に怒られても聞えよがしに口答えしたり、元恋人の夢を頭から否
定したり、つい本心を口にするなど、なつめは場の空気が読めないと
ころがある。ところが鹿児島弁丸出しの言葉使いで、相手に怒る気を
失わせてしまうのだ。そのあたりのキャラクター設定がユニークだ。
一方の十村は「子供を亡くした悲劇の主人公」のイメージを払拭して
もう一度現役に戻りたいと思っているのに、なかなかきっかけがつか
めない。彼はなつめのように損得勘定抜きで強力に後押ししてくれる
人を待っていたに違いない。そんな男の意地と切なさを江口洋介が背
中で表現していた。
(福本次郎)