残酷メルヘン 親指トムの冒険 - 佐々木貴之

気軽に楽しめるあっさりとした大人向け映像童話(点数 60点)


(C)2011 – FLACH FILM PRODUCTION – ARTE France

フランスの詩人シャルル・ペローがまとめた童話「親指トム」の原作に織り込まれた残酷描写をそのまま映像化したダーク・ファンタジー作品。

飢饉に見舞われた17世紀のヨーロッパのある国。親指トムと称される子は、5人兄弟の一番末っ子。食べることもままならないほどの貧乏に困った両親に捨てられた5人兄弟は、森の奥でさ迷っているうちに、立派な屋敷を発見。だが、この屋敷には恐ろしき人喰い鬼(トニ・ラヴァン)とその妻、可愛い5人の娘たちが住んでいた。5人兄弟は娘たちの部屋に宿泊することを許されるが……。

残酷描写に期待したいところだが、ホラーやバイオレンスのようなグロテスクを追求した残酷映像はあまりないため、グロ描写やハードな残酷シーンが苦手な方でも安心して観られるのが良心的だと言っても良いだろう。逆に、残酷描写に強い期待を抱いた方にとってはかなり物足りないだろう。

面白さが本格的に発揮されるのは終盤で、人喰い鬼が魔法のブーツを履いて脱走したトムら5人兄弟を追跡。5人を発見した人喰い鬼は巨大化し、一気に丸呑みしてしまう。5人兄弟は噛み砕かれていないため、人喰い鬼の胃の中にそのまま流れ込む。人喰い鬼の胃の中も観る者に興味を抱かせる。今までに食した人間や猫に鹿、鳥といった動物たちが胃液で消化されてグチャグチャになることなく、そのままの状態で胃の中に住んでいるのだ。メルヘンチックを感じさせる忘れ難いシーンだ。5人兄弟がいかにして脱出するのかが見所となり、人喰い鬼の脅威から逃れて生き残ることができるか否かと観る者をさらに引き込ませる。

81分と短めである本作は、気軽に楽しめるあっさりとした大人向け映像童話だ。

佐々木貴之

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