東京島 - 福本次郎

東京島

© 2010「東京島」フィルムパートナーズ

◆絶海の孤島で特別な地位を手に入れた女が、それを楽しみつつも何とか助かろうとエゴをむき出しにしていく。女だからとあがめられ、女だからとさげすまれ、それでも女だからこそ生き延びようとする強烈な決意が浮き彫りになる。(40点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 絶海の孤島、10数人の男の中のたった一人の女。彼女はその立場を利用して女王のごとく振舞い、男たちを操っていく。水も食料も豊富にあり、贅沢をいわなければ結構快適に暮らしていける環境で、いつしか男たちは島の日常になじんでいる。脱出の機会をうかがう女にはそんな男たちが不満でたまらない。映画は図らずも特別な地位を手に入れた女が、それを楽しみつつも何とかわが身だけでも助かろうとエゴをむき出しにしていく過程を描く。女だからとあがめられ、女だからとさげすまれ、それでも女だからこそ生き延びなければならない強烈な決意が浮き彫りにされていく。

 夫とクルージング中に遭難した清子は無人島に適応しそれなりの生活を送っていた。そこに18人のフリーターが漂着、清子はリーダーのカスカベの女になっている。その後中国人グループも上陸し、生活力のある彼らは清子の気を引いていく。

 身の回りのものとちょっとした道具しか持っていないはずなのに、なぜか島民はみなこぎれいでさっぱりしている。特に清子はメイクこそしていないが肌も髪もきれいなまま。これでは文明から隔絶されているとはとても見えず、旅行会社が企画した“無人島ツアー”のよう。清子をもう少し生活臭漂う女優が演じていれば「女というだけでこんなオバサンでもちやほやされる」俗世間との逆転現象を楽しめたのに、木村多江は顔もからだも整い過ぎている。もっとなりふり構わぬ姿を見せるべきだろう。

 やがて清子は中国人のいかだに同乗して海に出るが失敗、再び島に戻ってくる。しかし、島は軍司のリーダーシップのもと新たな秩序が出来上がっていて、清子の権威は地に落ちている。その後また清子は「妊娠」を武器に日本人と中国人を秤にかけ自らのポジションを向上させ、新たに漂着したフィリピン人女性グループを味方につける。ところがここでも、清子には計算高さは見え隠れしても、命を賭して日本に帰るという切実さまで伝わってこないのだ。自分のためならそこまでしないが、赤ちゃんのためなら何でもするような汚れ役に徹してほしかった。

福本次郎

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