わざわざリゾート地に出かけなくても、無為に過ごす豊饒は日常のすぐそばにあると教えてくれる。(点数 30点)
(C)2011オアシス計画
深夜の高速道路、最終回の映画館、平日の動物園…。都会の雑踏と喧
騒から少し距離を置くと、そこには周囲よりゆったりと時を刻むよう
な空間がある。ぎっしりと詰まったスケジュールに忙殺されているら
しい女は、気の向くままに仕事を抜け出し、出会った人々との会話を
楽しむ。映画はそんな“がんばっている仮面”を脱ぎ捨て素のままの
自分に戻ったヒロインがつかの間の息抜きをする姿を追い、わざわざ
リゾート地に出かけなくても、無為に過ごす豊饒は日常のすぐそばに
あると教えてくれる。
【ネタバレ注意】
コンビニ駐車場から道路に飛び出そうとしたオバサンは八百屋の男に
助けられる。彼女はトウコという俳優で撮影現場から逃げ出したと言
う。トウコは八百屋の配送車に乗りこみ、ふたりはドライブに出る。
最初は警戒していた八百屋も元バレーボール選手だった共通点から徐
々に打ち解けていくが、夜明けの海岸で朝日を眺めて別れるだけ。劇
的に美しい朝やけを見せるのでもなく、衝撃の告白もない。映画館で
トウコと元脚本家・キクチが再会する第2話も、その前フリに認知症の
老婆が登場するが、常連のもたいまさこの顔見せのみでストーリーに
は絡んでこない。
まあ、人生なんてこんなもの、押しつけがましさのないところはよい。
だが、もっとイマジネーションを刺激するような工夫をすべきだろう、
せっかく映像という表現手段を用いるのならば。。。
(福本次郎)