◆満天の星、二人乗りのバイク、手をつないだままの卒業旅行。今の幸せが永遠に続くと思い込む若い恋人たちの姿がまぶしい。10年にわたってさまよう若いふたりの愛の行方を、ドリカムの原曲同様、少し軽いでタッチでリアルに描く。(60点)
満天の星、二人乗りのバイク、ずっと手をつないだままのスペイン卒業旅行。今の幸せが永遠に続くと思い込む若い恋人たちの姿がまぶしい。目の前の相手を見つめ同じ未来を歩んでいけると根拠もなく信じられた日々、それはやがて仕事を持つことで現実というシビアな世界にさらされる。出会いから別れ、そして再会。10年もの長きにわたってさまよう若いふたりの愛の行方と仕事との板ばさみになる苦悩。ドリカムの原曲同様、少し軽いでタッチでリアルに描く。
大学生のさやかは自主映画の撮影で建築を学ぶ慶太と知り合い恋人同士になる。やがて卒業、さやかはOLに慶太は設計事務所に就職するが、お互いの間に距離が生まれていく。そんな時、慶太にスペイン行きの話が持ち上がる。
将来を約束していた恋人が、夢を実現するために突然遠くに行こうとしている。しかし、相手は夢より結婚を望んでいる。自分もやっとやりたい職が見つかったばかり。仕事と恋愛は両立できても、仕事と結婚の両立は困難。一方的に別れを告げることで、さやかは自分のプライドを守ると同時に慶太に夢を叶えさせる。何かを選ぶということは何かを捨てるということ。友人の結婚式でブーケをキャッチしたさやかの姿から、つらく切なく悲しい気持ちが痛いほど伝わってくる。
さらに数年後、スペインで着実にキャリアを積んでいる慶太に対し、さやかは仕事に没頭する余り余裕をなくしている。そんな時に知った「恋がかなう花火」、クライマックスはその下で再会するといういかにもな設定。ふたりは卒業旅行の約束を果たすためもう一度ガウディの建築を見に行く。ラストはお約束どおりの大甘なのだが、恋や仕事の楽しさだけでなく、人生には思い通りにいかないことがたくさんあり、それを乗り越えるところに喜びがあることをきちんと描いているところがすごく後味がよかった。
(福本次郎)