最強のふたり - 青森 学

フランスから届いた一篇の映画が「介護」の現実を見せつつ、幸福のありようについても浮き彫りにしていく(点数 83点)


(c) 2011 SPLENDIDO / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / TEN FILMS / CHAOCORP

富豪でありながらも、首から下が麻痺した障がいを持つフィリップ(フランソワ・クリュゼ)と貧困層出身で介護の仕事にありついたドリス(オマール・シー)との友情を描いた映画なのだが、泣けるという触れ込みで観たけれど、別に泣けなかった。泣けない代わりに9割がたの笑いと最後の残りは一陣の風が抜けるような余韻で終わるので、鑑賞後は清々しい気分になった。

介護が話題の中心となるために、排泄の介助や性欲の処理など周囲に介助が必要な人がいないと分からないようなエピソードも紹介される。この作品は昨年話題になった『英国王のスピーチ』にあった、平民と貴族のような階級を越えた友情を描いているのだが、今作は富裕と貧困を対比させ、現実を知らない健常者がどうやって障がい者の現実と向き合い理解していくかの過程をユーモアたっぷりに描いている点で、より普遍的で多くの人の心に届くテーマのように思う。

映画の中でEarth wind & fireの曲が効果的に使われるのだが、ドリスがBoogie wonderlandを軽快なステップで踊るシーンは心が湧き立つような興奮を覚えた。主演のオマール・シーはコメディアンだそうだが、スクリーンの中で演じる彼のジョークは巧みで、劇場でオペラを鑑賞するシーンでは、彼の遠慮のない鋭いツッコミには腹がよじれそうだった。

原題は『UNTOUCHABLE』で、不可触民というのは畏れ遠ざけるあまり描き方がおよび腰になり神聖化されたりして、実態と違うことになり距離感がますます募るのだが、この映画の優れている点はそういった障がい者を何かのアイコンとして描かず、「糞もすれば恋もする」というありのままの人間として描いていることである。この映画では世間から逸脱したアンタッチャブルなはずのふたりの心に触れるという反語法的なはなしになっているところも興味深い。抽象芸術にも造詣が深いフィリップはドリスの絵画の才能を見抜くのだが、ドリスのあけすけで本音を隠さない性格に信をおける人物であることにも気付くところはやはりフィリップは相当の目利きであったといえる。
うわべだけの同情ならむしろ無用。フィリップにとって必要なのは日常生活に立ちはだかる障害の介助である以上に、心のバリアフリーだったのだ。障がい者と健常者の関係が、このフィリップとドリスのような友誼が理想であるのかは確信を持てない。
だが、人間関係において忖度なく付き合える仲はとても貴重であり人生をより豊かにすることが出来る。これはそんな本音で語り合える友を得たふたりの人生讃歌なのである。

青森 学

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