書道ガールズ!! わたしたちの甲子園 - 町田敦夫

書道ガールズ!! わたしたちの甲子園

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◆沈滞する地方都市に美少女たちが喝!(70点)

 地方在住の女子高生が得意の書道で町おこしに一役買った実話を映画化。部室での衝突や友情といった普遍的な題材に、活力を失いゆく地方都市という今日的なテーマを織りこみ、瑞々しい作品に仕立てている。四国中央高校で書道部長を務める里子(成海璃子)は、新任顧問の池澤が衆人環視の中、音楽に合わせて巨大な半紙に字を書いたのを見て、「邪道だ」とショックを受ける。だが文房具屋の娘の清美(高畑充希)は、廃業を決めた父親のために商店街でそのパフォーマンスを披露しようと決意。里子らも成り行きで協力するのだが……。

 「美少女」としての大器ぶりを早くから認められながら、このところクズ映画にばかり出続けていた成海が、一本気で融通の利かない書道部長を好演。同時期に公開の『武士道シックスティーン』と合わせ、ようやく自分の居場所を見つけた感がある。共演にも桜庭“スピカ”ななみや、山下“リハウス”リオら、いずれ劣らぬ美少女たちが顔をそろえた。

 とはいえ日テレ出身の猪俣隆一監督は、本作を“美少女映画”にはしていない。というより、そういう作りにすることを意図的に避けている節がある。彼女たちが身につけるセーラー服はあくまでも膝丈で、ダッフルコートや髪型は昭和の気配が漂うくらいダサダサ。床に置いた巨大な紙にガニマタ・中腰で書をしたためる姿は、いかに美少女が演じようともカワイく見える代物ではない。だが、そんな美化しすぎない製作姿勢がかえって等身大の共感を誘うし、モデルとなった女子高生たちへの逆説的な敬意を表しているようにも思える。

 脚本の永田優子は、中心となる5人の女子高生のキャラと背景を巧みに描き分けた。「やる気がないなら退部しなさい!」と宣告するお堅い里子と、「まあまあ、みんなで楽しくやろうよ」となだめる香奈(桜庭)とのやりとりは、今日も全国の中・高・大学の部室で繰り返されているはずだ。書の才能を持ちながら家庭の事情で退部する美央(山下)と、不況のあおりで転校していく清美は、それぞれの親子愛のエピソードで観客を泣かせる。いじめられっ子だった小春(小島藤子)はほとんど口をきかないが、まれに発する一言が重い。

 公害の元凶である製紙工場の煙突が「郷土のシンボル」的な扱いをされているのには激しい違和感を覚えたが、地場産業が衰退し、シャッター商店街が増えていく本作の背景は、全国の地方都市に共通のもの。だからこそ自らの友情と町の活気を取り戻すために奮闘する美少女たちの墨だらけの顔が、ことさらに輝いて見えるのだろう。視野の狭かった里子が、様々なできごとを経て成長していく姿にも好感。代役なしで書道シーンに臨んだキャストが、最後の大会で大書する「再生」の一文字が熱い。

町田敦夫

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