時をかける少女 - 小梶勝男

◆大林宣彦監督の名作の続編。大林版へのリスペクトが随所に感じられ、世界観の踏襲に成功している(68点)

 大林宣彦監督、原田知世主演の「時をかける少女」(1983)には、今も多くの熱狂的なファンがいる。名作と言っていいだろう。本作は、そのリメークではなく、続編である。かつて原田知世が演じた芳山和子(今回は安田成美)の子供、あかり(仲里依紗)が、母親の代わりに1974年にタイム・リープし、深町一夫(石丸幹二)を探す物語だ。

 名作の続編は、前作からの世界観の踏襲が上手くいかず、失敗してしまうことが多い。だが本作は、大林版の世界を壊すことなく、新しい物語を作ることに成功している。劇場用長編を初めて手がけた谷口正晃監督は、大林版のファンなのだろう。随所に大林版へのリスペクトが感じられ、大林版で尾美としのりが演じた浅倉吾朗が突然登場しても、違和感がほとんどなかった。

 谷口監督は、冒頭で仲里依紗が「ガニ股」で叫ぶシーンで主人公の「あかり」像が見えた、という。まさにその通りで、あの「ガニ股」は実に良かった。大林版の原田知世は、友人宅に入るときに、靴をきちんと揃えていた。そんなちょっとした場面から、芳山和子のキャラクターや時代が伝わってきたが、本作では「ガニ股」が、あかりのキャラクターと今の時代を、一目瞭然に語っている。元気で明るい仲は、大林版にはないこの映画ならではの、新たな魅力となっていたと思う。

 タイム・リープ後の1974年の描写には、細かいところは別として、すぐに分かる明らかな嘘がある。私は2か所見つけたが、もっとあるのかも知れない。そこ以外は、うまくあの時代を再現しているように思った。どこが「嘘」なのかは、見つける楽しみを奪わないため、あえて書かない。是非、見て探して欲しい。

 主人公がタイム・リープして1974年の若者たちと過ごす下りがやや退屈なのと、大林版にあったような、印象的な映像に乏しいのが残念。大林版のスピンオフとしてはよく出来ていると思うが、大林版を知らない観客にとってはどうだろうか。また、大林版には「ジュヴナイル」という前提があったが、「ジュヴナイル」というジャンル自体が意味を持たなくなった今、本作のタイム・リープの方法やその描写など、SFとしての設定は、かなり安っぽく、矛盾だらけに見えてしまうかも知れない。やはり本作は、大林版のファンのための映画なのだろう。

小梶勝男

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