◆みつばちがいなくなる事態は一大事だが、人間の一方的な善意や過剰なエコロジーの風潮への、やんわりとした批判に感じた(55点)
70年代に大人気だったTVアニメ「昆虫物語みなしごハッチ」の初の劇場版。生き別れた母親を探すみつばちを主人公に、勇気と希望というメッセージを分かりやすく描いている。スズメバチの襲来で連れ去られた母親を探すため、ひとりで旅を続けるみつばちの子ハッチ。森でさまざまな虫たちに出会うが、旅の途中で、人間が住む町・セピアタウンに迷いこんでしまう。そこでハッチは、なぜか虫と会話ができる少女・アミィと出会い、心を通わせるが…。
吉田竜夫が設立し、オリジナルアニメを得意としたアニメ・スタジオ「タツノコプロ」。ここからは、天野喜孝や押井守ら、今も活躍する多くの名クリエイターが巣立った。そのタツノコプロの代表作のひとつがメルヘン調アニメ「みなしごハッチ」だ。ハッチの旅は波乱万丈で、正義感が強いために、小さな身体で、より大きな昆虫に自分から無謀な戦いを挑んでいく。もちろんボコボコにやられてしまうことが多いのだが、それを見て他の昆虫たちが、何もせずあきらめていた自分たちの行動をみつめなおすというストーリーは、チャレンジを奮起するものだ。ハッチの旅は自然界の弱肉強食や、虫の限りある寿命を学ぶ成長の旅でもある。虫たちと会話ができる少女アミィと、ハッチを含む昆虫たちとのコミュニケーションの描き方が独特で、ハッチを助けるアミィが虫たちの生き方に深くかかわればかかわるほど、その声は聞きとれなくなる状況に。自然には原初的なルールがある。みつばちがいなくなる事態は一大事だが、人間の一方的な善意や過剰なエコロジーの風潮への、やんわりとした批判に感じた。まぁ、コ難しいことはさて置き、超がつくほど陽性な絵柄や声のトーンで、ハッチの大冒険を楽しんでほしい。
(渡まち子)