死んでいった者、死を許されなかった者、生き残った者、それぞれの立場から戦争の不条理が描かれる。(点数 50点)
(C)2011「日輪の遺産」製作委員会
命を差し出したくらいでは贖えないほどの罪悪感を背負って生きなけ
ればならない苦しみに押しつぶされそうになる。自分を信じ従ってき
てくれた非戦闘員と上官の命令の間で板挟みになる主人公の苦悩は、
時が解決してくれる類のものでは決してない。映画は“マッカーサー
の財宝”を秘匿する密命を帯びた男が、日本再建の重大な目的の前で、
己の命だけでなく純真な少女たちの青春まで奪う価値があるのかを問
う。死んでいった者、死を許されなかった者、生き残った者、それぞ
れの立場から戦争の不条理が描かれる。
【ネタバレ注意】
敗戦直前、陸軍最高幹部直々に戦後復興資金900億円分の金塊を隠す極
秘任務を与えられた真柴少佐と小泉中尉は、望月曹長とともに女子学
生20人と引率の先生を連れて作業にかかる。
金塊を「決號榴弾」と疑わず勤労奉仕に励む女学生たち。彼女たちは
リベラルな先生の引率のもと“お国のため”と汗を流す。平和への願
いを言葉にできない息苦しさを我慢して、「出てこいミニッツマッカ
ーサー」と歌いながら。リアリストの真柴とインテリの小泉も彼女た
ちの気持ちを理解しているが、立場上顔に出せない。みな、日本は終
わりだとわかっていても絶対に口にしてはいけない、そんな見えない
軛に支配された当時の空気と日本人の心情がわかりやすく再現される。
ただ、物語は退役米兵の回想と元女子学生の打ち明け話の二重構造の
中途半端な構成をとったため、米兵部分の蛇足感が否めない。
(福本次郎)