今までになくノワールなジャッキー・チェン(50点)
今までになくノワールなジャッキー・チェンが見られるが、コミカルで人間味ある彼の演技の長所を考えると、やはりミス・キャスト。歓楽街・歌舞伎町の裏社会を舞台に、行方不明の恋人を探すため中国から密入国した鉄頭が、ヤクザの世界でのしあがる姿を描く。バイオレンス描写がすさまじいが、何よりトレードマークのアクションがほとんどなく、笑顔さえみせないジャッキーにとまどってしまう。物語は、発端である恋人探しがいつのまにか脇に追いやられ裏社会の権力争いが主軸になり、中途半端な印象も。しかもそこに社会性を込めるほどの奥行はない。印象的なのは、無国籍なカオスと化した歌舞伎町の猥雑な空気だ。密入国者がうごめく場所での勢力争いでは誰も信じられない。根はまじめな鉄頭が、歌舞伎町という権力の場でつぶされていく運命が哀しかった。
(渡まち子)