携帯小説の映画化にしては上出来(65点)
ホラーと純愛という異なる素材の組合せで、携帯小説の映画化にしては上出来の作品だ。女子高生がハマっている「携帯彼氏」は、好みの彼氏のアバターを設定して遊ぶ恋愛シミュレーションゲーム。里美と由香は、ラブゲージと呼ばれる恋愛度数が100または0になると死ぬという不気味な噂を耳にする。謎の自殺を遂げた同級生の携帯画面にリアルなアバターの顔が映し出されたのを見た二人は、真相を探るためゲームをダウンロードする。不審な事故に遭った里美の元カレの直人の死も、どうやらこのゲームに関係があるらしい。里美は、警察に調査を懇願するが相手にされず、さらなる事件が起こる。
携帯が怨念のツールになるという物語には「着信アリ」があるが、ただ呪いのメールが届くだけではなく、本作では動画、ゲームの勝敗、赤外線で転送、ついにサーバーにまでたどり着くから、ディティールが凝っている。状況説明がほとんどなく、登場人物の感情中心に話が展開するのが携帯小説の特徴だが、ITに関して比較的リアルなのは、それだけ若者の生活に携帯の機能が深く浸透している証拠だ。そこに悪意と愛情という真逆の要素を対比させながら、ホラー・ファンタジーの味わいを出したことが面白さを生んでいる。低予算の映画の身の丈にあったベーシックな恐怖映像もそれなりに楽しめた。ホラーとして超常的な怖さはほとんどないが、むしろ人為的悪意を強く感じさせたのは、こういう小品の場合、好印象である。ラスト、呪いは終わったと安心したところで「携帯彼女」へと引き継ぐアイデアもなかなか上手かった。
(渡まち子)