結婚を目の前にした男の、「この女でいいのか」の気持ちがリアルだ。(点数 50点)
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気がつくと3人の女が婚約者になっている。美しく頭脳も明晰な完璧な
同僚、セクシーでさばさばした性格の風俗嬢、古風で尽くすタイプだ
がずれている人形劇師。それぞれに魅力を感じつつも、誰が本物の婚
約者か見当がつかない。映画はそんな主人公の幸せな災難をコミカル
に描く。なくした記憶を取り戻すために彼女たちと愛を確認していく
姿は、まさに彼自身の自分探し。その過程で、1人を選べない心の弱さ
が露呈していく。決められないのは逃げているだけ、結婚を目の前に
した男の、「この女でいいのか」の気持ちがリアルだ。
【ネタバレ注意】
営業先で頭を打った輝彦は、恋人のデータをすっぽり忘れてしまう。
さらにかばんから婚約指輪が見つかり、我こそ婚約者と名乗る女が3人
現れる。わけのわからない輝彦は、謎の少女・エミに相談する。
3人の女はある意味、男の理想像ともいえる存在。ただ、その中から1
人に絞るとなるとみなどこか物足りず、踏ん切りがつかない。3人との
日替わりデートは楽しいはずなのに、結婚という現実が重くのしかか
ってくると途端に憂欝なものになっていく。
それでも結論をズルズル先延ばしにする輝彦には、もはやモテモテの
うらやましさより、悲壮感を覚える。あり得ない設定ながら、非常に
ファンタジックな映像が独特の世界観を作り上げ、輝彦の逡巡を明る
い苦悩に変えている。この物語に登場する女たちは、輝彦にもてあそ
ばれた被害者なのに、皆輝彦に優しい。それは彼の人徳なのだろうか。
(福本次郎)