3Dの美しい効果を真面目に追及している(70点)
3Dのホラー映画は、飛び出してビックリさせることだけを目的にしたものも多いが、本作は非常に丁寧に作られ、かつ3Dの美しい効果を真面目に追及している。10年前に遊園地のお化け屋敷で行方不明になった少女ユキが突然戻ってくる。主人公ケンと友人のモトキ、盲目の少女リン、ユキの妹のミユは戸惑うが、突然ユキが倒れたため深夜病院に向かう。辿り着いたその病院はやがて姿を変え始め、朽ち果てた迷宮のような空間と化した。見覚えのあるその場所で、ユキを含めた5人は10年前の事件の秘められた真実を体感していく。
日本映画として初のデジタル3D映画を手掛けたのはホラーの達人・清水崇監督だ。映像はもちろん、ストーリーもさすがに抜かりがない。富士急ハイランドの人気アトラクション「戦慄迷宮」をモチーフに、幼い頃に体験した罪の意識がトラウマとなって若者たちを襲う物語は、廃病院という舞台設定も手伝って、リアルな恐怖が体験できる。ホラーは画面が暗く3Dでは不利なことが多いが、本作では、螺旋階段の手すりの赤、うさぎのリュックの白、観客にむかって伸びてくる腕のはだ色と、画面の色彩設計にメリハリがあるのがいい。また、ショック音で怖がらせようとする安易な演出が極力抑えられているのもポイントが高い。映画は、殺人鬼や霊によるスプラッタ系ホラーというより、人間心理を突いたサスペンス・スリラーと呼びたいもので、女の子の心の闇と揺れを意外なほどつかんだ演出は見事である。若手中心のキャストも皆、好演。もっとも“世界の柳楽優弥”が随分フケ顔になったのには驚いた。
(渡まち子)