戦場でワルツを - 佐々木貴之

◆アニメだからこそ描くことができた(85点)

 元イスラエル軍兵士であったアリ・フォルマン監督が、自身の戦争体験を基にしたドキュメンタリー・アニメ作品。

 映画監督アリは、悪夢に悩まされていた。それを友人に打ち明けると、レバノン戦争による後遺症だと伝えられる。だが、アリの記憶からは戦争当時のことが抹消されている状態。この悩みを解消するには、失われた記憶を取り戻さなければならない。そして、アリはかつての戦友たちを訪ねて戦争当時のことを聞き出していく。

 ドキュメンタリーをアニメとして描くという奇抜なアイデアを試みた本作。この興味深い新味が魅力の一つである。これだけでも本作は観る価値大だと言い切れる。

 戦争の残酷さや悲惨さといった描写は、アニメだからこそ描くことができたのであり、これらがしっかりと伝わってくる。また、アニメだからこそ残酷さも柔らげられた仕上がりになっていて観易いのである。

 映像面でも凝った作り方となっており、幻影的な映像からはミステリアスかつシュールな雰囲気を醸し出す。観る者に不思議な感覚を与えながらも作品の世界へと惹きつかせる。

 本作は、アリが記憶を復活させるための過去への旅を描いたロードムービー的趣向もあり、冒険アニメ映画として観ても面白いと言える。

 ラストは衝撃が待ち受けている。何が観られるのか? その結末とは? が観てのお楽しみなのである。驚かされること間違いなしだと言って良い。戦争の愚かさ、残酷さ、悲惨さがずっしりと伝わってくるので大いに注目して頂きたい。

佐々木貴之

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