インフルエンザが流行している時期だからこそ、導入部は非常に身近に感じてしまう。ワクチン不足や院内感染等、現実の事例を巧みに取り入れ、ウイルスという脅威に対してマスクで予防することがいかに大切かを教えてくれる。(30点)
インフルエンザが流行している時期だからこそ、導入部は非常に身近に感じてしまう。医者の誤診、ワクチン不足、院内感染等、現実に起きている事例を巧みに取り入れ、ウイルスという目に見えない脅威に対してマスクで予防することがいかに大切かを教えてくれる。だが、この作品から何らかの意義を見出すのはそこまで。人々がパニックになる様子はありきたり、医療関係者の頑張る姿も空回り。さらに後半の湿っぽいエピソードの連続が映画のスピードを完全に殺してしまい、スクリーンを見つめているのがつらくなる。
救命救急医・松岡は新型インフルエンザと思われる患者を診察するが、ワクチンが効かず死なせてしまう。その後感染は病院内に広まり、事態収拾のためにWHOから松岡の元恋人・栄子が派遣されてくる。しかし感染はとどまることを知らず日本中に広がり、社会基盤が麻痺してしまう。
冒頭、鳥インフルエンザ発生を見せておいて、その流れから日本で流行しているのが新型の鳥インフルエンザのようにミスリードするのはいかがなものか。おまけに熱帯の島がウイルスの発生源だったというのだが、その正体はあいまいにされたままだ。大多数が高熱・出血の挙句死に至るのに、数少ない回復者がなぜ快癒したのか調べずに、治療は彼らの血液から血清を作るだけという安易さ。そもそもウイルスを持ち込んだ日本人医師は空港や飛行機内でもウイルスをまき散らしているはずで、感染が日本だけに限定されるのもおかしい。あまりにもご都合主義のストーリー、もしかしてこれはツッコミどころを探す映画なのだろうか。
医師の倫理、群集心理、政府の対応、環境汚染といった大上段に構えた問題から、医療関係者の使命、家族や恋人同士の愛、命の大切さといったことまで描きこもうとしてすべてが中途半端になってしまった。寝食を惜しんで働く看護師や女医も院内感染で死なせることで、涙を誘おうとする試みもあまりにもあざとくて失敗。もっと登場人物を絞り込んでエピソードを掘り下げてほしかった。
(福本次郎)