◆リアリティ皆無でおそまつな内容(10点)
死というアイテムでひたすら泣きたい韓流ファン向けの悲恋ものだが、リアリティ皆無でおそまつな内容だ。孤児として育ったケイは、高校で、生意気で奔放な女の子クリームと出会う。彼女も事故で家族を失った孤児だったことから二人は共同生活を始めることに。成長し、ケイはラジオ局のディレクターに、クリームは作詞家になる。互いにかけがえのない存在と感じている二人だったが、ケイは自分の身体が不治の病に冒され余命わずかということを知る。彼は、自分の代わりにクリームを愛し守ってくれる男性が現われることを願うが、そんな時、クリームは誠実な男性ジュファンと出会い急速に惹かれていく…。
もしかしてこの映画の脚本には「クォン・サンウが不治の病で死に、一同悲しむ」との一行しか書かれていないのでは?! とさえ疑った。というのも、ディテールがあまりにいいかげんなのだ。孤児ながら裕福な二人がいきなりプラトニックな同棲をはじめる序盤がまずありえない。さらに、異様なまでに自己チューなクリームの言動に唖然とする。本作は終盤に、驚きの要素が2度あり、結局すべての人が自分の想いを犠牲にすることで究極の愛を貫いたというオチになるが、これが甚だ納得できないのだ。ケイとクリームは互いに愛し合いながらも、相手を思うあまりそれを口にできない。その犠牲的精神には感服するが、だからといって他人を不幸にしていいのだろうか。歯科医ジュファンとそのフィアンセに対して二人がとる態度は、もうムチャクチャで、ケイとクリームカップルの涙の純愛物語のとばっちりという他ない。他人に迷惑をかけまくる二人をみていると、死にたいのなら二人でさっさと死んでくれとさえ思ってしまった。涙を流す様子が世界一サマになると評判の韓流スターのクォン・サンウは、日本でも根強い人気の俳優だが、いくらファンでもここまで子供騙しの内容では納得しないだろう。監督のウォン・テヨンの本業は詩人。どうりでセリフが詩的だが、まずは物語の骨格から勉強してほしい。こんな自己陶酔型のラブストーリーは、傑作を多く生む韓国映画界の名折れというしかない。
(渡まち子)