悪夢のエレベーター - 小梶勝男

 俳優、構成作家として活躍する堀部圭亮の長編映画初監督作。木下半太の人気小説を映画化している。

 あるマンションのエレベーターに4人の男女が閉じ込められる。刑務所帰りの男(内野聖陽)は自称「空き巣専門のプロ」。他人の心が読める超能力者(モト冬樹)はジャージ姿で、ジョギングに出かけようとしていたという。ゴスロリ少女(佐津川愛美)は屋上から自殺するためにマンションを訪れた。気を失っていた男(斎藤工)は妻の出産に立ち会うために急いでいた。4人はエレベーターから脱出できるか――。

 と、ここまでしか書けない。「キサラギ」や「アフタースクール」のように、どんでん返しが売りなのだ。

 話の設定はうそくさいものの、展開が非常によく出来ている。たいていの人は見事に騙され、驚かされるだろう。シチュエーション・コメディーとしてもかなり笑えた。計画通りにいかず、状況がどんどん複雑になっていくのが可笑しい。セリフの「間」も気持ちよかった。そして最後はちょっとゾッとする仕掛けになっている。

 もちろん、トリッキーなだけでは深みに欠けてしまう。「核」となる感情が描かれていなければならない。例えば、「キサラギ」にはB級アイドルへの愛が、「アフタースクール」には青春へのノスタルジーが核にあり、作品全体に温かい雰囲気が流れていた。本作では、負け犬人生の悲哀や、狂気、怨念が核となっている。だが、そこが共感したり、怖さを感じたりするまで、十分に描かれていない。そのため、ストーリーは面白いけれども、心を動かされるには至らなかったのが惜しい。

 とはいえ、テンポのいい語り口で、最後まで飽きずに楽しめた。デビッド・クローネンバーグの「スキャナーズ」を思わせるような特殊メークの見せ場も、唐突に出現する。堀部圭亮のこだわりだろうか。長編初監督作としてはレベルが高く、才能のある人だと思う。

小梶勝男

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