キャラが抜群に立っているのが魅力(65点)
密室型のサスペンス・コメディには驚きの仕掛けが満載で、謎解きの醍醐味が味わえる。マンションのエレベーターが急停止し、男女4人が中に閉じ込められる。偶然乗り合わせた彼らは、空き巣専門の刑務所帰りの男、他人の過去が読める中年の超能力者、自殺願望のゴスロリ少女、そして臨月の妻がいながら浮気中の若い男という面々だ。4人は互いに不信感をつのらせるが、腑に落ちない小さな違和感から、やがて互いの秘密を暴露しあうことになる。
原作は木下半太のベストセラー小説。密室にいる人間たちが、次第に内面を吐露する展開は心理劇のお約束だが、本作には一筋縄ではいかない事情がある。例によって“かん口令”が出ているので、詳しくは明かせないが、閉じ込められた4人と、彼らの周囲に散らばる妻、愛人、マンションの管理人の秘密はトンデモナイものだ。この映画のキャッチが人間不信エンタテインメントというのも頷ける。キャラが抜群に立っているのが魅力で、特に、関西弁のガラの悪い男を演じる内野聖陽がいい。彼が冒頭に見せる孤独な内面は、この場面が見る人によって、事件が起こる前でも、すべてが終わった後でも、どちらにもとれそうなところに曖昧な面白味があった。ただ、死人が出るのはいかがなものか。こういう作品は気分よく騙されてこそ快感を覚えるもの。映画ならではの後味のいい終わり方があっても良かったのではと思う。
(渡まち子)