性と生の地獄を見た主婦が体験する禁断の解放感と心の闇を通じて、人間の本質に迫る。(点数 70点)
(C)2011「恋の罪」製作委員会
たとえ性欲でしかなかったとしても、他人から求められ必要とされる
快感に目覚め、期待に応えようとするヒロイン。異様なまでに潔癖な
夫との上品な生活、その一方で生きている実感には乏しい。そんな主
婦が落ちた陥穽は底なしの深さで彼女の本性を解き放つ。映画は、昼
間は大学助教授・夜は売春婦の顔を持つ女に、性と生の地獄を見た主
婦が体験する禁断の解放感と心の闇を通じて、人間の本質に迫る。
【ネタバレ注意】
貞淑な妻・いずみはモデルにスカウトされる。撮影に呼ばれたスタジ
オで無理矢理AVに出演させられた彼女は抑えていた気持ちに火をつけ、刺激
を求めて円山町をさまよううちに美津子という立ちんぼ女と出会う。
「本物の言葉はひとつひとつ体を持っている」。そういって美津子は
セックスといういずみの内なる欲望に、売春行為で実体を与えていく。
美津子が口にする言葉は、ある意味答えを求めるほど真理から遠ざか
る禅問答のよう。だが、いずみにとって男に抱かれている間だけは命
の充実を感じられる瞬間でもある。
円山町の廃アパートで起きたバラバラ殺人事件に端を発した物語は思
いもよらぬ方向に寄り道しながら、時に押しつけがましいほどの禍々
しさで女たちの満たされぬ魂の彷徨を描く。どこに向かっているのか、
いつまで続くのか、それは本人たちにもわからない。さまざまなメタ
ファーに満ちたエピソードの数々は、結局、愛に真実などないことを
証明したかったのだろうか。。。
(福本次郎)