彼岸島 - 小梶勝男

◆絶海の孤島で高校生たちが吸血鬼と化した島民たちと戦うサバイバル・アクション。様々な要素が入り交じった内容で、アクションやCGは今ひとつだが、娯楽映画の王道は外れていない(64点)

 本作は「火山高」で知られるキム・テギュンを監督に迎えてはいるが、松本光司のマンガが原作。舞台が日本で、監督以外のキャスト、スタッフも日本人なので、日本映画と考えていいだろう。タイトルからはホラーをイメージするが、アクションの印象が強い。宣伝文句の通りだが、「サバイバル・アクション」というのがピッタリだ。

 明(石黒英雄)は謎の美女レイ(水川あさみ)によって、行方不明の兄・篤(渡辺大)が彼岸島と呼ばれる絶海の孤島で生きていると知らされる。レイに導かれ、明は高校の友人たちと彼岸島に渡るが、そこは吸血鬼と化した島民たちに支配されていた。明と友人たちは兄・篤とともに、吸血鬼と戦い始める。

 冒頭、巨大な丸太で吸血鬼の顔を突いて潰す描写はかなり残酷で、スプラッター度の高さを期待したが、残念ながらこの部分だけだった。登場する島民の吸血鬼がいい。作務衣風の衣装に編み笠、白塗りで、土俗的なおどろおどろしい怖さがある。吸血鬼たちのアジトの描写も怪奇味がたっぷりで楽しめた。しかし、この吸血鬼たちの親玉は何故かビジュアル系ロックバンドのボーカル風。「魔界転生」(1981)の沢田研二ぐらいのカリスマ性が欲しかったが、何とも安っぽくて嫌になってしまった。

 高校生たちは、最初は島の中を吸血鬼軍団から逃げ回り、後半では剣を手に立ち向かう。この高校生たちのキャラクターはマンガ通りなのだろうが、かなりステレオタイプに誇張されていた。剣のアクションはそれなりに迫力があり、中でも石黒英雄は体当たりで頑張っている。だが、見せ方が今ひとつうまくない。妙な間があいてしまっているように感じた。ワイヤーワークも使っているが、それが見せ場になるほどでもない。

 謎の美女を演じる水川あさみは、ラブホテルで裸にタオルを巻く姿を見せたり、吸血鬼のボスに着物姿で血を吸われたりして、セクシー場面も見せてくれるが、ちょっとしたサービスといった感じで、エロチシズムを感じるには至らない。CGの怪物も登場して、これもそれなりによく出来ているが、驚くほどではない。

 つまりは、いろいろとやっていて退屈はしないのだが、すべてが今ひとつで、「ここが凄い」と言えるところが見当たらないのだ。その一方で、高校生たちの友情や兄弟愛は、しつこいぐらいに強調して描かれていて、人間関係が濃厚な韓国の監督らしい持ち味を感じた。

 ストーリーは全く違うが、連想したのは「海女の化物屋敷」(1959)や「花嫁吸血魔」(1960)のような、50年代末から60年代初頭にかけての新東宝のスリラーだ。安っぽい部分もあるが、とにかくサービス精神に溢れているという点で同じなのだ。娯楽映画の王道は外れていないと思う。

小梶勝男

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