幸せの始まりは - 樺沢 紫苑

随所に笑いを交えながら、深めていく人物描写の凄さ。(90点)

 ジャック・ニコルソンが演じる強迫性障害をかかえる偏屈な小説家の
ラブストーリー。随所に笑いを交えながら、深めていく人物描写の凄さ。

 強迫性障害についてもしっかりとリサーチされていて、
デフォルメされながらも病的心理状態をうまくストーリー展開に
からめていく手際が秀逸。
  もちろん、ラストは清々しい感動に包まれます。

 ブルックス監督は、『愛と追憶の日々』でアカデミー監督賞を受賞し、
ハリウッドの名監督の一人だと思うのですが、
70歳という年齢のせいか、
『スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと』 (2004年)
以来、監督作品がなく、寂しく思っていました。
 その久々の監督作品が、この『幸せの始まりは』だったわけです。

 プロソフトボールチームのキャプテンとして大活躍してきた
リサ(リース・ウィザースプーン)が、ある日突然、戦力外通知を受けます。

 一方、突然、投資詐欺の容疑で政府からの起訴状を受け取った男、
ジョージ(ポール・ラッド)。

 人生最悪の日を迎えた二人が、ひょんなことからその晩に、
最悪の気分で初デートをすることに・・・という話です。

 ごくありふれたハリウッドのラブコメではありますが、
さすがはブルックス監督。人物描写が細かく、非常に丁寧です。
 さりげないしシーンにもグッと引きこまれます。

 オリジナル脚本が非常に少ないハリウッドにおいて、
ブルックス監督が、プロのソフトボール選手などに取材して、
しっかりと書き上げたオリジナルの脚本である、という
のも魅力的です。

 非常に笑えます。コメディとしてよくできているし、
最後にはホロリとさせられます。

 素敵なシーンを一つだけ紹介します。

 人生最悪の日を迎えた二人が、初デートするシーンです。
 二人ともデートするような気分じゃない。
 でも、一人でいるのも寂しい。

 お互いにも最悪の気分なわけですから、必然的に険悪な雰囲気に陥いります。
 そこでリサは言います。「黙って食事をしましょう」。

 何も語らない沈黙が続く不思議なデート。
 店を出たジョージは言います。
「ありがとう、黙っていたおかげで気分がすっきりした」と・・・。

 語るだけが癒しではない。時には「沈黙」することで気分が落ち着き、
冷静さを取り戻す。そんな「癒し」もあるのか・・・と、
気付きを得ました。

 撮影は、『シンドラーのリスト』などスピルバーグ作品を多く手がける
ヤヌス・カミンスキーですから、映像が素晴らしい。

 街並みとか、バス停のさりげない雰囲気て、様々な情感が描かれます。
 映像で語る。まさに、映画だな・・・と。

 社会人として一生懸命頑張ってきたのに、ぶち当たる「壁」のようなもの。
 それをいかに超えていくのか。

 そんなテーマもあって、若い人よりも大人の方か感情移入しやすい、
大人のラブストーリーと言えるかもしれません。
 見て損のない一本だと思います。

樺沢の評価  ★★★★☆
(★★★★★が満点。☆は、★の半分)

追伸 ジャック・ニコルソンは思ったほど多くは登場しないのですが、
凄い存在感を放っています。
 ラストのニコルソンの10秒の演技が、見物です。

樺沢 紫苑

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