希望の国 - 小梶勝男

原発事故を正面から描いた園子温監督の力作。放射能の恐怖をあおるような描写に疑問を感じながらも、そのエネルギーに圧倒された(点数 78点)


(C)The Land of Hope Film Partners

「ヒミズ」が昨年のベネチア映画祭に出品された際、園子温監督は、「次は原発の話を撮る」と語っていた。
その言葉通り、東日本大震災から数年後を舞台に、地震で原子力発電所がメルトダウンする話を撮った。
テーマがテーマだけに、日本では資金調達が難しく、イギリスと台湾の製作会社からの出資を得て完成させたという。
そのエネルギーには敬意を覚える。
だが、このような描き方でいいのか、どうか。問題作である。
タイトルは「希望の国」だが、描かれているのは、絶望なのだ。

原発の近くにある長島県大原町。小野泰彦(夏八木勲)と妻の智恵子(大谷直子)、息子の洋一(村上淳)とその妻のいずみ(神楽坂恵)の4人家族は、酪農を営んでいた。
ある日、大地震で、原発が水素爆発を起こす。やがて、原発のメルトダウンが伝えられる。
避難区域が設けられ、小野の自宅の庭が、その境界線となる。
小野は息子夫婦を避難させ、自分たちは自宅に残ることにする。いずみは妊娠していることが分かる。

詩人でもある園監督は、詩のようなセリフを詩の朗読のようなセリフ回しで、役者に猛烈な勢いでしゃべらせ、手持ちカメラを移動させながら撮り、短いカットでつなぐ、といった演出が持ち味だった。
ところが今回は、カメラをどっしりと据えて、ワンシーンワンカットを多用し、奥行きのある端正な絵を撮っている。
一方で、セリフやセリフ回しは、いつも通り、ヒステリックな調子が目立った。
スピーディーな演出であれば気にならなかったそうしたセリフの調子が、今回はとても気になる。
気にはなるが、それがある種のエネルギーにもなっている。
時事的なテーマに正面から挑むため、カメラをどっしり構えたのだ。
確かにセリフは浮き上がってしまったが、浮き上がった分だけ、観客に突き刺さってくるではないか。

とはいえ、この内容を、被災者はどう思うだろうか。
がれきと化した街が特撮で描かれ、「福島を思い出せ」というセリフが飛び交い、母乳からセシウムが出たことが語られ、ガイガーカウンターが振り切れる。
妊娠したいずみは放射能を恐れる余り、家中の窓をテープで隙間なく塞ぎ、防護服を着て街を歩き、ビニールの仕切りの中で寝る。
放射能への恐怖を、必要以上にあおっているようにも思える。

「ヒミズ」の時は、原作漫画のラストを改変しても、被災地にエールを送り、希望を描いた園監督が、今回は絶望ばかりを描いている。「ヒミズ」は地震と津波がテーマだったが、今回は原発という、人為的な事故がテーマだからだろう。

いろいろ思いながらも、私はこの作品を支持する。
園監督の強烈なインディペンデント魂を感じ、作品に、圧倒的なエネルギーを感じるのである。挑発的で、スキャンダラスで、エネルギッシュ。
これは園監督にしか撮れない映画だ。

小梶勝男

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