◆ポムネンカを取巻く仲間たちがユニーク(70点)
女性を中心に、可愛らしさと癒し効果のある作風で支持されているチェコ製アニメの待望の最新作が本作だ。
ボロい屋根裏に使われなくなった古いトランクがある。その中には様々なおもちゃが暮らしている。中でも人形のポムネンカは大の人気者。ある日、ポムネンカは悪の親分フラヴァに拉致されてしまう。彼女を救出するべく仲間たちが立ち上がり、屋根裏の果てに存在する悪の帝国へと乗り込む。
ポムネンカを取巻く仲間たちがユニークであり、キャラクターの個性がしっかりと描かれている。鼻が鉛筆で耳がボタンでできているシュブルト、眠気と食欲は人並みのクマのぬいぐるみのムハ、ドラゴン退治に熱中しているマリオネットのクラソン。この三キャラクターの活躍ぶりは、とても愉快であり、観る者を存分に楽しませてくれる。
登場するキャラクターは皆ガラクタで作られている。使い古しの用済みであるガラクタを使って面白いモノを作るというアイデアは素晴らしく、そこから「モノを大切にする心」や「リサイクルの重要さ」といったことが感じられる。監督のイジー・バルタは本作のために集めたガラクタを敢えて汚してみたという。その結果、アンティーク・コレクションのような味わい深さを一段と引き出すことに成功したのである。
映像表現にも拘りが感じられ、同趣向の作品と一線を画した作り方が面白いと言える。単なる人形アニメだけでなく、2Dの線画アニメや生身の人間が登場する実写も取り入れられているのである。
その他の印象深いシーンと言えば、クローゼットから溢れ出すシーツでできた波を本物の水による波と同じように魅せたり、実写だったら間違いなく気持ち悪いと思える虫軍団がゾロゾロと壁を這い回るシーンだ。
(佐々木貴之)