少女たちの羅針盤 - 福本次郎

“生と死”をテーマにしたシュールな設定の中にリアルな感情を盛り込んだ演目は、じっくり鑑賞したくなるほどの出来栄えだ。(点数 60点)


(C) 映画「少女たちの羅針盤」製作委員会

閉店後の商店街に即席の舞台を設えて、早口芝居を上演する少女たち。
個性豊かな4人組が演じる、コント風シチュエーションの女子高生恋愛
事情を鋭く観察して戯画化した、卓球ラリーのごときテンポのパフォ
ーマンスは、思わず笑いを漏らしてしまう。物語は撮影のために故郷
に戻ったタレントが4年前の死亡事故の迷宮に追い込まれていく過程で、
少女劇団の光と影を映し出す。演劇に没頭する鮮やかな群像劇と、ミ
ステリーの二種類の趣向を楽しませる意図は理解できるが、彼女たち
の繊細な心情を丁寧に紡いだ回想部分だけでも十分に楽しめる。

ロケ先の女優・舞利亜に脅迫めいたメッセージが届き、彼女は封印し
た過去を思い出す。それは4年前、瑠美・梨里子・かなめ・蘭の4人の
女子高生演劇ユニット・羅針盤の結成から解散までの記憶だった。

気性が激しく先輩や顧問と対立して演劇部を飛び出した瑠美を中心に、
街頭でのライブを繰り返すうちに人気が出る羅針盤。市民ホールでの
コンテスト用脚本で瑠美と梨里子の間に齟齬が生じる一方、控え目な
かなめと目鼻立ちの通った蘭はそれぞれに家庭の事情を抱えている。
固い信頼に結ばれながらも微妙な葛藤やすれ違いがあったり、将来に
対する期待や不安が入り混じってりしながらも、「今」を精いっぱい
生きようとしている彼女たちの姿がまばゆいまでのきらめきを放つ。

そして、“生と死”をテーマにしたシュールな設定の中にリアルな感
情を盛り込んだ演目は、じっくり鑑賞したくなるほどの出来栄えだ。

福本次郎

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