小川の辺 - 福本次郎

組織の中で個人は歯車に過ぎない。だがそれはモノを考え喜怒哀楽を持った人間でもある。映画は主人公の姿を通じて、宮仕えする者の悲哀を描く。(点数 50点)


(C) 2011「小川の辺」製作委員会

誅さねばならないのは正しいことをした友人。しかも彼の妻は実の妹。
出来るならばやりたくないが、命令には逆らえない。そして事を収め
られるのは自分しかいない。なによりも体面を重んじる武家社会、建
前と人の心の齟齬に気付きながらも一人では何もできない男の苦悩を
リアルに再現する。所詮、組織の中で個人は歯車に過ぎない。だがそ
れはモノを考え喜怒哀楽を持った人間でもある。映画はそんな主人公
の姿を通じて、宮仕えする者の悲哀を描く。

海坂藩士・朔之助は脱藩した佐久間を斬れと家老から命を受ける。佐
久間はかつて剣仲間である上に実妹・田鶴の夫でもある。逡巡の末、
朔之助は部下の新蔵と共に佐久間と田鶴が潜伏する行徳に向かう。

佐久間は飢饉に苦しむ農民を救おうと、藩の農政に対する建白書を藩
主に提出したのが原因で海坂藩に居づらくなったという事情がある。
正面切って藩主に上申する勇気のない家老たちも内心は「わが意を得
たり」の気でいるが、気性の激しい藩主を慮って佐久間一人に泥をか
ぶせようとする。事なかれ主義の蔓延と尻拭いさせられる者の悲哀が、
朔之助・新蔵の道中、詳らかになる。

ただ、朔之助と新蔵の旅はある種ロードムービーなのだが、途中でほ
とんどハプニングが起きないのが物足りない。何らかのトラブルに巻
き込まれるうちに朔之助が抱えていた秘密や、新蔵の朔之助に対する
歪んだ気持ちが明らかになっていくなどの工夫がほしかった。

福本次郎

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