小さな命が呼ぶとき - 福本次郎

小さな命が呼ぶとき

◆いわゆる難病モノなのだが、病魔と闘う子供たちではなく、ある意味本人たちより心を痛めている彼らの父親にスポットを当てる。感情に訴える湿っぽさよりもアクティブさを強調し、サクセスストーリーとしての爽快感が得られた。(60点)

 愛する子供たちが死の病に冒されたとき、両親はその運命を受け入れられるか。担当医も匙を投げる症状なのに、父親はすがるような思いで最先端理論の実用化を目指す。いわゆる難病モノなのだが、映画は病魔と闘う子供たちではなく、ある意味本人たちより心を痛めている彼らの父親にスポットを当て、愛情の深さを行動で示す姿を描く。主人公がパートナーを見つけ、カネを借り、起業して新薬を開発する一面と、なんとか子供たちの命を救いたいという願いが一体となる様子は、感情に訴える湿っぽさよりもアクティブさを強調し、ビジネスにおけるサクセスストーリーとしての爽快感が得られた。

 平均寿命9年のポンペ病に罹った2人の子供を持つジョンは、治療法の研究者・ロバートの論文を目にする。理論は独創的でもなかなか結果を出せないロバートはジョンの資金援助で実験を開始、大手製薬会社の傘下に入って更なる環境を得る。

 大学の研究室にこもりっきりで数式と格闘するロバートはいかにも象牙の塔の住人。一方、実業界で鍛えられたジョンはアイデアを実現させるため資金集めに奔走する。このあたりの、世知に乏しいロバートがジョンや他の人間と触れあううちに徐々に社会性を身につけていく過程が楽しい。そんなロバートに手を焼きながらも、山積する難題を片付けるジョンのたくましさ・したたかさと好対照をなしている。何事も正面突破するジョンのエネルギーを生むのは、わが子のためという個人的な熱意以上に、ポンペ病に苦しむすべての子供たちに希望を与えたいという社会的な情熱にちがいない。

 やがてロバートの作った酵素の臨床実験をジョンは自分の子供たちで行い、効果を観察する。親族以外面会禁止の病室にロバートが見舞いに来てジョンがハグをするが、あくまで照れくさそうにはにかむロバート。人付き合いが苦手なロバートが精いっぱい見せた他人への思いやりが、彼もまたジョンとの共同作業を通じて変わったことを示す。ジョンの家族の闘病や苦悩より、ロバートの人間として成長のほうがある意味興味深い作品だった。

福本次郎

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