少し己を客観視できず感情を抑制できないおばさんをレスリー・マンヴィルが好演。(点数 70点)
(C)2010 UNTITLED 09 LIMITED, UK FILM COUNCIL AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION
まるで沈黙を恐れるかのように絶え間なくしゃべり続ける中年女。寂
しさを隠そうとしている反面、孤独な心を理解してもらいたいと強く
願っているようでもある。夢はあった、そして叶った、しかし現実と
いう嵐の前で徐々に色あせ、ついには無残に壊れてしまった。映画は
そんな彼女の心境を赤いクルマで象徴する。きっといい人なのだろう、
ただ少し己を客観視できず感情を抑制できないおばさんをレスリー・
マンヴィルが好演。まだまだチャーミングだと思い込んで頑張ってい
るけれど、どこかズレている女心のイタさと哀しさを見事に表現して
いた。
【ネタバレ注意】
トムとジェリーの老夫婦と息子のジョーは良好な親子関係を築いてい
る。ある日、ジェリーの同僚・メアリーを家に招くが、メアリーは男
運の悪さを嘆き中古車を買う予定を語った後、泥酔して眠りこける。
バーでちょっとセクシーな男に秋波を送ったり、独身のジョーに必死
でアプローチするメアリー。おそらく50歳は越えている、なのに恋の
現役にしがみつこうとする。その後もジョーの恋人・ケイティに対し
て露骨な不快感と対抗心をむき出しにするシーンは滑稽で、女として
の勝負は明白なのにそれでも「非」と「負け」に納得できずすねる姿
はむしろ憐れみすら誘うほどだった。
食卓ではふたりの弾む会話に口をはさめないメアリーの所在なさげな
表情が印象的だった。
(福本次郎)