時代そのものを描く物語(70点)
何やら某TVドラマのような邦題だが、天才画家ゴヤの目を通して、人間を喜劇にも悲劇にも振り分ける時代そのものを描く物語だ。異常な異端審問がまかり通る18世紀のスペイン。天使のような少女イネスと、巧みに時の権力に取り入るロレンソ神父は、共にゴヤのモデルだが、時代の荒波に飲み込まれ、2人の運命は激しく狂っていく。宗教の狂気とフォアマンが経験した共産主義の暴挙に、異なる時代の共通性が見える。哀しく歪んだ愛を体現するバルデムとポートマンは共に名演。ラストに振り向くイネスの複雑な笑顔でラブ・ストーリーの香りを残す演出が見事だ。
(渡まち子)