実験室KR-13 - 小梶勝男

◆濃密なソリッド・シチュエーション・スリラー。異様な緊張感で観客を心理的に追いつめていく(68点)

 「テキサス・チェンソー ビギニング」のジョナサン・リーベスマン監督が手がけたサスペンス。心理実験のため、テーブルとイスがあるだけの殺風景な部屋に集められた4人の男女。その前に現れた「博士」と称する男は、1日250ドルという高額な報酬を約束し、4段階の実験で1人ずつ被験者が脱落していくと説明する。そして突然、被験者の1人である女性の頭をピストルで撃ち抜く。「博士」が素早く部屋を出ると、ドアはロックされ、死体と一緒に残りの3人が閉じ込められる。室内に「問題」のナレーションが流れ、制限時間後に「正解」から一番遠かった者が、1人ずつ殺されていくという。

 舞台のほとんどは実験室と、それを監視するモニタールーム。登場人物も少ない。「CUBE」や「SAW」シリーズのようなソリッド・シチュエーション(限定状況)・スリラーの一種だ。実験の目的はすぐに明かし、「問題」に対しどんな答えを出せばいいのか、被験者のうち生き残って脱出する者はいるのか、などに観客の興味を絞っていく展開が巧い。

 そして、限定状況をいかに濃密に見せるか、という点でも成功している。「テキサス・チェンソー ビギニング」にあった異様な緊張感は、本作にも濃密に漂っている。カメラのピントは一か所にとどまらず、複数の登場人物の表情を求めて次々と移り変わっていき、状況の見えない不安を強調する。アップの多様が効果的だ。実験室の内装の無機質さは、実験を行う者たちの非人間性も表現している。絶望的なラストまで、緊張を途切れさせることがない。

 実験室内だけでなく、モニタールームで実験を続けるべきかどうか迷う女性研究者の姿も描くことで、観客に2つの視点を提供しているのも良かった。モニタールームの会話で観客に状況を説明し、曖昧さを残さない。もし、被験者同様に、観客にも実験者が見えないとしたら、状況も分からず、延々と苦しむ被験者に感情移入することで、最後まで見続けるのがかなり辛かっただろう。観客は全体の状況が分かることで、窒息しそうな息苦しさから少しは逃れることが出来る。女性研究者役のクロエ・セヴィニーも、わずかな表情の変化で揺れ動く心を巧みに表現していた。

 それでも、結構きつかった。直接的な残酷描写やショックシーンがあるわけではないが、心理的にぎりぎりと締め付けられるので、不快感はかなり強い。実験の目的はよく考えるとバカバカしいのだが、リーベスマン監督の描写力がそれを気付かせない。「ソリッド」度はかなりのものだ。ラストも全く絶望的でカタルシスはない。

 ソリッド・シチュエーション・スリラーとして評価は出来るが、見る人を選ぶ作品だ。

小梶勝男

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