孤高のメス - 福本次郎

孤高のメス

© 2010「孤高のメス」製作委員会

◆医学に対する真摯な使命感に支えられた主人公はまさに絵にかいたようなヒーローだ。彼の、患者の命を救うためには法を犯すことも厭わずあくまで自分の信念を曲げない誠実無私な生き方は、カッコよすぎて非の打ちどころがない。(70点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 抜群の腕前と知見を持つのに人当たりは柔らかい。難しい手術に率先して挑むのに功名心とは無縁。ただ、医学に対する真摯な使命感に支えられた主人公は、女だけでなく男も惚れる、まさに絵にかいたようなヒーローだ。さらに看護師・助手などの尊敬を一身に集めても絶対に謙虚な態度を崩さない一方で、患者の命を救うためには法を犯すことも厭わず、あくまで自分の信念を曲げない過程はカッコよすぎて非の打ちどころがない。映画は1人の看護婦の目を通して、医師の本分を貫き通した男の誠実無私な生き方に迫る。

 地方都市に赴任してきた外科医・当麻は次々と運び込まれる患者に対し適切な処置を施し、やる気のない勤務医や看護師・浪子の意識を変えていく。ある日、市長が肝硬変で倒れ、助かる道は肝臓移植しかない状況で、折しも交通事故で脳死状態の高校生が病院に運び込まれる。当麻は違法な生体肝移植を行う決断をする。

 繊細な指づかいで内臓を切り裂き血管をつなぐ。他の医師が手術すると動脈を傷つけ、切開部位は血まみれになるのに、当麻の手にかかると「美しい」と浪子が感想を漏らすほどの手際の良さ。その手術同様、一点の曇りもない当麻の人柄は、彼の活躍に嫉妬する旧態依然とした大学病院から派遣された医師たちの汚れた感情と好対照をなす。特に生体肝移植を巡って警察やマスコミにチクるライバル医師のせこさが漫画チックで笑えた。

 市長の手術の日、マスコミや警察の喧騒をよそに、当麻は淡々と手術を進める。脳死高校生から摘出した肝臓と市長の肝臓と入れ替える気の遠くなる作業をこなしていく。オペ中の当麻には心の迷いは一切なく、目の前の患者だけを見ている。そして12時間にも及ぶ大手術が終わっても疲れた顔を見せず、浪子たちをねぎらいう心遣いを見せる。ここまでくると、もはや医師の鑑というよりスーパーマン、人命救助という正義のために闘った姿は神々しくさえあったが、都はるみファンという以外にもう少し人間的な部分も見せてほしかった。

福本次郎

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