◆書籍の付録ながら、今年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭で上映された短編集。美女が次々と登場するのが楽しいが、中でも亥戸碧と中西絵里奈がいい(55点)
この映画は劇場未公開映画です。評価の基準は未公開映画に対してのものとなります。
今年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭で上映された、極北の映画人・山田誠二監督の最新作だ。とはいえ、劇場公開用作品ではなく、DVDで販売されるものでもない。何と、書籍の付録なのだ。心霊スポットの紹介や実録怪談などを一冊にまとめた山田監督の著書「妖奇怪談全集」(ビジネス社)の付録として作られた短編6本で、1本が5分弱、全部で27分しかない。書籍の付録が国際映画祭で上映されるのは、初めてか、極めて稀なことだろう。
6本には、「怪談何かいる。」「怪談ずっと、いる」「怪談そこにいる」「怪談どこにいる?」「怪談先にいる!」「怪談ここにいるよ」とタイトルが付いている。それぞれ、美女が霊に襲われる実話怪談風の物語。編集・音効・語りを直木賞作家の京極夏彦が務めている。
様々な幽霊の出現パターンが見られるのは楽しいし、造形もよく出来ている。美女が登場するので見ていて飽きない。露骨な表現はないものも、何気ない場面にちょっとセクシーな描写がある。
「怪談ずっと、いる」は、主演の亥戸碧が大変魅力的で、トイレの場面のエロティックなのがよかった。「怪談先にいる!」の中西絵里奈は以前から山田作品に出演しているが、だんだん大人っぽく、綺麗になっている。今回は、裸は見せないものの、入浴場面があった。そこに出てくる幽霊は結構怖かった。顔がドロドロなのだ。
山田監督の長編は「見立て」によって作られているので、見る方にも「見立て」の能力が必要だ。誰が見ても面白いものではないかも知れない。だが、本作など短編は普通の実録怪談として、誰にでも楽しめるように作られている。書籍の付録としては見応えがあり、かなりの完成度だと思う。
(小梶勝男)